老衰で死亡…池袋暴走事故の「飯塚幸三受刑者」に“上級国民”バッシングが集中した理由 世論を逆なでしてしまった一審での「無罪主張」
無念の涙
警視庁は2019年11月、過失運転致死傷容疑で東京地検に書類送検。東京地検は2020年2月に同罪で在宅起訴した。
「20年10月に初公判が東京地裁で開かれました。この時点でも上級国民という批判は依然として強いものがありました。飯塚受刑者は遺族に謝罪は行いましたが、『アクセルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ暴走した』と起訴事実を否認し、無罪を主張しました。これで遺族感情と世論を完全に逆撫でする格好になったのです。事故で妻と3歳の娘さんを失った松永拓也さんは会見で『2人の命と遺族の無念に向き合っていない』と悔しさをにじませました」(同・記者)
2021年6月に開かれた第8回公判では被害者参加制度を使い、松永さんと亡くなった妻の父親が出廷し、被告人質問を行った。
「松永さんは飯塚受刑者の無罪主張と、ドライブレコーダーの走行記録など客観的証拠が食い違っていることを問いただしました。ところが飯塚受刑者は『踏み間違いはしておりません。私の過失はないものと思っております』と強く反論。また亡くなった妻と娘さんの名前と漢字を記憶しているか質問したところ、2人の名前は答えられたものの、娘さんの漢字は『難しい字なので書けない』と言い放ったのです。父親は事故後の2年間、どのように過ごしていたのか質問すると、何と『リハビリが辛い』と回答。これには世論も唖然としました。公判後、会見で松永さんは『被告人の口から真実を述べて欲しいという夢は破れた』と目に涙を浮かべたのです」(同・記者)
松永さんと飯塚受刑者の面会
2021年9月に判決公判が開かれ、禁錮5年の実刑判決が下された。裁判官は「被告人は謝罪の言葉を口にしているが、自らの過失を否定する態度に終始しており、深い反省の念は認められない」と指摘した。
求刑は法定刑の上限である禁錮7年だったのだが、この時点で弁護士からも「そもそも求刑が軽すぎる」という批判が相次いだ。現在でも交通事故の判決は軽すぎるという社会的議論は続いている。この判決が専門家などから再び検証されることもあるだろう。
当時、デイリー新潮はさまざまな関連記事を配信したが、その中に「90歳になった池袋暴走『飯塚幸三』被告 有罪確定でも刑務所に入らない可能性」(2021年6月25日)がある。実は刑事訴訟法では年齢が70歳を超えている場合、刑の執行停止が可能だと定められているのだ。
さらに「禁錮7年求刑の飯塚幸三被告 メダリスト・内柴正人氏と同じ“勲章没収”の屈辱」(2021年7月20日)も配信。こちらは勲章の剥奪がどのように行われるのか、経産省などに取材を行った記事だ。
検察も飯塚受刑者も控訴せず、判決が確定。飯塚受刑者は刑務所に収監された。今年2月には松永さんに謝罪の手紙を送り、ブレーキとアクセルの踏み間違いを認めた。こうしたことから5月に松永さんと飯塚受刑者の面会が実現していた。
[2/3ページ]