小笠原、菅野、青柳…メジャー球団スカウトは「日本人投手」をどう評価する? 甲子園での活躍が“不安材料”になるケースも
「小笠原は大丈夫か?」
米フリーエージェント市場で日本人投手が大きな話題となっている。注目度の高さでは千葉ロッテからポスティング・システムによる移籍に挑む佐々木朗希(23)がダントツだが、同じくポスティングでの米球界挑戦を表明している中日の小笠原慎之介(27)、菅野智之(35)、青柳晃洋(30)らもNPBでの実績から「高い評価」を受けているのだ。
【写真】菊池雄星と今永昇太…日本人投手の評価を押し上げた二人の活躍ぶり
「今季、カブスの今永昇太が活躍したことで改めて『日本の投手はレベルが高い』との声も聞かれるようになりました。変化球のコントロールの良さを挙げるスカウトもいました。『日本人は箸を使うから器用なのだろう。食事でフォークとナイフを使用する国との違いだ』とも言っていましたが……」(米国人ライター)
改めて、日本人投手の制球力の高さが認められたのは誇らしいことだ。だが、一部には、日本のアマチュア球界を勘違いしているのではと思われる、“疑問”も囁かれていた。
「小笠原は大丈夫か?」
今永に加え、アストロズ移籍後の菊池雄星も地区優勝に大きく貢献したことで、新たに渡米してくる小笠原へも期待が集まっている。だが、メジャーリーグ各球団が一抹の不安を抱く理由は、小笠原の経歴にあった。
「松坂大輔(44)、田中将大(36)、藤浪晋太郎(30)が理由です。小笠原も3人と同じ甲子園大会の優勝投手です。松坂たちはメジャーリーグに移籍後、肩や肘を故障しており、その原因の一つが、甲子園での連投にあるのではないかとの仮説が立てられているのです」(前出・同)
日本高校野球連盟は、20年センバツ大会から「一投手が1週間で投げられるのは500球まで」と投球数に制限を設けている。また、今夏の大会からは炎天下での試合を避けるため、午前中と夕方に試合を分ける二部制も導入した。また、甲子園の大会前には投手と登板の可能性がある選手のメディカルチェックも行っており、投手の安全を守るため、低反発の金属バットを採用するなどしてきた。球児の健康と安全面には常に配慮し、毎年、改善点を話し合っている。
たしかに小笠原には故障歴がある。18年に左肘遊離体除去手術などを受け、19年は肩痛を発症し、同年シーズンは大きく出遅れてしまった。しかし、今季も24試合に先発登板し、140イニング以上を投げている。それでも、「大丈夫か?」との声が聞かれたのは、松坂、田中、藤浪と経歴が被るのに加え、米国には甲子園大会のような「地方予選の1回戦から勝ち上がっていく高校球児の全国大会」がないことと、一部米スカウトの「甲子園大会=酷使」という先入観によるものだろう。
高校時代から有望選手をチェック
「今では珍しい光景ではなくなりましたが、メジャーリーグのスカウトも甲子園大会を視察しています」(アマチュア野球担当記者)
日米協定では、相手国の有望アマチュア選手を自国のドラフト会議で指名できないことになっている。なぜ、指名できない選手を視察するのか――21年夏の甲子園大会中、その疑問をア・リーグ中部地区球団のスカウトにぶつけてみた。すると、こう答えた。
「この世代の誰かが、将来、メジャーリーグに挑戦してくるかもしれない。そのときに備えての視察です」
将来、メジャー入りした選手に対し、より適切な判断や評価を下すための準備だと言う。
数年後、甲子園大会で活躍した投手がメジャーリーグ挑戦を表明し、争奪戦となったとする。そのとき、ライバル球団が知らないアマチュア時代の視察内容を伝えれば、選手の代理人は「そこまで調べてくれているのか」と好印象を抱き、優位に交渉が進められる。
また、仮に獲得後に故障してしまった場合でも、10代でどのような起用がされていたのか編成部門に報告できる。仮に10代で“酷使”されていたのなら、故障に備えて球団としてどんなケアをしていくべきかの適切なプランも立てられる。こうしたアマチュア時代にまで遡った詳細なデータを作ることは、スカウト自身へのプラス査定にもなるそうだ。
「今永はサイヤング賞の投票で5位になりました。同じ左腕として、小笠原に今永を重ねて見ているのでしょう。ただ、小笠原はWBCやプレミア12大会に出場していません。彼が出場した15年のU-18大会のデータを探したところ、2試合しか投げていなかったので参考にならなかったとも聞いています。そうなると、シーズン中のデータから判断しなければなりませんが、今季が5勝11敗、23年が7勝12敗。味方打線の援護に恵まれなかったため、勝ち星が少ない点はメジャー球団のスカウトも理解しています。ただ、とにかく情報が少ない。過去の資料を調べ直したら、15年夏の甲子園大会で優勝していることが分かったと。1年生からベンチ入りし、主力投手としてかなりのイニング数を投げていたので、スカウトは当時の様子を知ろうとしたんでしょう」(前出・米国人ライター)
35歳で海を渡る菅野智之も年齢を含め、マイナス評価はされていない。米MSNのスポーツニュースでは、「多くの日本選手がメジャーリーグに来る際、ドジャースをホームに選んできた。そんなドジャースにとって、確固たる成績を残してきた菅野のようなベテランを獲得することは当然だ」(11月20日付)と伝え、パドレスのゼネラルマネージャー、A・J・プレラー氏は「多くの実績を残し、経験もある。トーキョージャイアンツのエースということは、最大のステージで投げてきたということ。私たちは交渉の準備を進めている」とGM会議中に発言している。レンジャーズ、エンゼルス、ブルワーズ、メッツも興味を示しているという。
「菅野はVCスポーツグループと代理人契約を結びました。同社のクライアントにはドジャースのムーキー・ベッツ(32)もおり、その経緯でドジャースと交渉すると予想されています」(前出・現地記者)
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