103万円の壁だけじゃない…国民民主「トリガー条項」発動で生活への恩恵は ガソリン価格の「約4割が税金」
いつの間にか使い道が変わっていたガソリン税
「ガソリン減税」については、衆院選の以前より、国民民主党の玉木雄一郎代表が与党に「トリガー条項」の発動を求めてきた経緯がある。2023年の補正予算案においては、この「トリガー条項」発動の協議を巡り、国民民主党が予算案の「賛成」から「反対」に転じる場面も見られた。
この「トリガー条項」とは何なのか――?
「トリガー条項とは、ガソリンの平均小売価格が3カ月連続で1リットル160円を超えた場合、自動的にガソリン税が“本則税率”のみに引き下げられる仕組みのことです」
そう解説するのは、帝国データバンク情報統括部の藤本直弘氏だ。
「本則税率」とは揮発油税と地方揮発油税のことで、ガソリン価格に関わらず1リットルあたり28.7円かけられている。それとは別に「暫定税率」として、こちらもガソリン価格とは関係なく固定で25.1円が課せられている。またそれとは別に「石油税」として2.8円が課せられており、こちらの内訳は石油石炭税と地球温暖化対策税となっている。
「ガソリン税の暫定税率は、もとは1974年に道路特定財源として全国に道を作り続けるための財源として設置されました。ただいつまで“暫定”で続けるのかという議論になり2010年に廃止に。しかしその後、同額の25.1円が“特例税率”として新設され、今は特定の使い道を定めない一般財源に充てられています」(藤本氏)
さらに、ここに消費税が上乗せになる。消費税はガソリンの「本体価格」だけでなく、2つのガソリン税と石油税を合わせた総額に対し10%課税されており、「典型的な二重課税」として批判されることも多い。
1リットル170円のガソリン価格のうち、約4割を税金が占めることになる――。
2023年9月には史上最高値を更新
国民民主党の求めるとおりに「トリガー条項」が発動された場合、ガソリン税のうち「暫定税率」の25.1円の支払いが不要になる。
仮に月に1回“レギュラー満タン” (約50リットルと想定)にする家庭では、約1250円(50リットル×25.1円)の減税。週に2回の家庭では約1万円の減税になる計算だ。
「コロナ禍では、需要減少により一時的に原油価格が大きく下落しました。ただ、2021年以降は世界的な経済活動の再開に加え、主要産油国の減産調整や、ウクライナ侵攻への制裁によるロシア原油の禁輸措置、さらには円安も加わってガソリン価格の高止まりが続いています」(藤本氏)
2023年9月には1リットルあたり187.9円と、およそ15年ぶりに史上最高値を更新する場面もある。不満の高まりを背景に、政府は1リットルあたり5円を上限とした「ガソリン補助金」を拠出したが、予算の圧迫が懸念されるうえに「根本解決にはならない」という指摘も。
あなたの家庭は「トリガー条項」発動によって、どれだけ恩恵を受けるだろうか? 国と地方を合わせ税収は1.5兆円程度減少すると見込まれている。
「“103万円の壁”の件もそうですが、我々1人1人が課税の仕組みに関心を持ち理解を深めることが、あるいは社会課題解決の近道なのかも知れません」(同)