マツキヨはまさかの「メガネ拭き」で勝負 韓国と火花散らす「日本企業」のベトナム戦略
パイオニアのイオン 10年で「寿司」に起きた変化
ベトナムへのローカライズでビジネスをしてきた日本企業のパイオニアが、イオングループである。今年で10周年を迎え、長い期間をかけてベトナム市場を切り拓いてきた。後に続いた日本企業のお手本である。
ベトナム1号店である「イオンモール タンフーセラドン」も10年ぶりに訪問した。こちらは中間層を対象とした郊外店舗である。日本ではあまり見られなくなった活気ある売り場は、ライブキッチンなどエンタメ感もあり、筆者も買い物へのワクワク感をおぼえた。
10年前は、寿司は1個ずつ販売されていたように記憶している。なぜなら、1個それぞれの価格が安いからである。しかし、今は所得向上もあり、1個売りよりお得な寿司折りセット(複数セット)が売れるようになっているという変化が起きているそうだ。
イオンベトナムの古澤康之社長は、ベトナムの消費者に向けた商品開発や売り場展開を工夫していると話す。
「ベトナム向けのトップバリュを200品前後開発しています。また日本にはないカテゴリーの専門売り場を展開し、顧客に寄り添った展開をしています」
トップバリューでは、卵などの食品が定番の売れ筋商品だそう。加工食品では春雨やマカロニなどが人気のようだ。
ほかにも「グランビューティーク」という百貨店ブランドのコスメをカジュアルにして展開する売り場や、ローティーン向けアパレル「MY CLOSET」の売り場があり、若い女性たちが楽しそうに買い物していた。日本でも、若者人口が多ければこのような売り場も成功するだろうが、残念ながら日本の人口動態を鑑みると、そんな時代は来そうにない……。
マツキヨが着目した意外な品
日本企業のローカライズ戦略をさらに見てみよう。
マツキヨは化粧品を中心に拡販しているが、ベトナム市場の新規開拓も試みている。例えば、ベトナムに浸透していなかったメガネクリーナー等にも目をつけ、PBのメガネクリーナー売り場を拡販している。今後は、ビール消費世界9位というお国柄に注目し、アルコール関連カテゴリーの売り出しを検討しているそうだ。
ファミマでは、生クリームを使ったスイーツを販売している。しかし、1970年代の日本がそうであったように、ベトナムではまだバタークリームが人気のため、販売は軟調。再度、発売の機会を伺っている。新興国での販売は、そのタイミングが大事。トライ&エラーを繰り返して、ブラッシュアップさせるのが常套だ。
日本では当たり前となったマンダムのGATSBYのボディペーパー、フェイシャルペーパーはじわじわ人気になっている。暑いベトナムの気候に一致した商品であり、ブレイク間近と見られている。ビューティー分野は、これからベトナム国内で大きな伸長が予想されるカテゴリーだ。インドネシアへ進出して55年が経つマンダムは、新興国での成功例を活かすべく、ベトナムを重点市場として進出。インドネシア工場で製造した買いやすい価格のGATSBYなどを前述のように展開している。
化粧品メーカーやマツキヨなど、ビューティー商品を取り扱う小売は、EC(ネット販売)の活用がキーポイントとなっているようだ。ベトナムでのEC化率は昨年30%伸長しており、ビューティーに関しては、特にECでの購買が多くなっている。韓国企業は販促を中心にここへの投資が上手く、日本企業が後塵を拝しているケースも少なくない。リアルな売り場と並行し、ECにどう先行投資していくかが、成功するための鍵になりそうだ。
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