戦力外から心機一転、新天地で大活躍! プロアマ問わず輝いた“リストラの星”な選手たち

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DeNAに移籍後、貴重な戦力に

 ここまで挙げた3人はある程度実績のあった選手だが、中には全く一軍で結果を残していなかったにもかかわらず、貴重な戦力となった選手も存在している。それがオリックスを自由契約となってDeNAに入団した中川颯だ。

 2020年のドラフト4位で立教大から入団したものの、怪我もあって2022年のオフには育成契約となるなど、オリックスでは4年間の在籍で一軍登板はわずか1試合だった。

 だが、昨年は二軍で21試合に登板して防御率1.38と結果を残していたこともあって、DeNAが支配下選手として獲得した。シーズン序盤は先発、夏場以降はリリーフとして登板を重ね、29試合で3勝、1セーブ、5ホールドをマークしてチームの日本一に貢献したのだ。

 DeNAの球団関係者は、中川について、以下のように話す。

「アンダースローという特徴があるのが一番ですが、ピッチャーとしてだけでなく、“野球選手”としての能力が高いですよね。フィールディングは野手顔負けの動きを見せますし、クイックモーションも速い。とにかく器用ですね。先発で、ちょっと結果が出なくてもリリーフに回ってしっかり抑えてくれました。オリックス時代は、人間関係でもちょっと苦しんだみたいですね。そういう意味では、うちはラッキーだったと思います」

 中川はDeNAが本拠地を置く横浜市の出身で、高校時代も地元の桐光学園でプレーしている(※大学時代は立教大で活躍した)。こうした環境面もプレーするうえでプラスに働いた部分があったのではないだろうか。

社会人野球で活躍している選手も

 ここまではNPBの他球団で活躍した選手を取り上げたが、カテゴリーを変えて花が開いた選手もいる。近年では、社会人野球で活躍している武田健吾(三菱重工East)が代表格と言えるだろう。オリックス、中日では外野のバックアップ要員として通算404試合に出場したが、2021年オフに自由契約となり三菱重工Eastに加入した。

 1年目から外野のレギュラーに定着すると、ENEOSの補強選手として出場した都市対抗では全試合クリーンアップとして起用され、チームの優勝にも大きく貢献した。

 社会人野球3年目となった今年は自チームで都市対抗優勝を達成した。5試合で17打数7安打、1本塁打という見事な成績で大会の優秀選手にも選ばれている。もともと外野の守備には定評があったが、社会人で打撃が大きく開花した。NPBで実績のある選手でも社会人野球ではなかなか活躍できないというケースもあるが、これだけ安定して成績を残しているというのは、見事という他ない。

 紹介した例を見ても分かるように、自由契約となっても環境の変化やきっかけで大きく飛躍する可能性を秘めた選手はいるはずだ。来年以降も1人でも多くの選手が“リストラの星”として活躍してくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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