「実は年明けが最も多忙」「私服が派手」…知られざる「葬儀屋」の裏側 「家族を“遺族”と呼んでしまうことも」

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コロナ禍の葬儀屋

 先述通り、葬儀の簡素化・省略化は以前から進んでいたが、それに拍車をかけたのがコロナ禍だと言われている。

 当時、行政から葬儀社への義務や指示は特になかったが、接触や対面でのサービスが基本の葬祭業においては、式の在り方が問われた。そのため、各葬儀社や管理組合が独自の基準を設けて対応していたという。

「料理の席はほぼ禁止、式場の座席間は1メートルほど離し、触れるものは全てアルコール消毒。結果、ほぼ全ての葬儀社が減収減益だったと思います」

 さらに、コロナ禍の葬儀屋は式における対策だけでなく、当然そのコロナによって亡くなった遺体に対峙することもあった。

「弊社ではコロナで亡くなった方の葬儀自体が禁止に。ご遺体も、自社施設に安置してはいけないという社内ルールだったので、火葬時間まで病院で安置できないか交渉。スタッフは全身保護の感染防護服を着て、ご遺体を巨大なビニール袋に収納、密閉、納棺。感染防護服は使用後密封して焼却。火葬が終わった後、ご遺骨を自宅に届けていました」

 そんなコロナ禍では、一時期「オンライン葬儀」が話題になった。外出自粛要請が出るなか、感染拡大を防ぎながら、最後の別れができると注目されたのだ。しかし、注目度の割にはそれほど流行ることはなかったという。

「オンライン葬儀の依頼は、当時100件につき1~2件程度。参列者の世代はもちろん、葬儀屋自体もITスキルやデジタル機器に弱いこともありましたが、そもそも当時から葬儀が小規模化していたため、あえて配信する必要もなかったんだと思います」

葬儀屋に入るクレーム

 そんな葬儀屋で現在問題になっているのが、「費用によるトラブル」だ。

「ネット広告などで安値を謳い客を呼び込み、実際は3~5倍の金額を請求する業者が蔓延して問題になっています」

 なかには、家族葬が10万円でできるとしながら、実際には200万円を請求されたケースもあるという。

 また、人生で数える程度しか経験することのない冠婚葬祭では、依頼者のイメージと実際の式に差異が発生しやすく、クレームに繋がりやすい。

「『思っていたのと違う、聞いていたのと違う』というのはよくあるクレームです。打ち合わせ・説明が不十分な葬儀社がよく言われるトラブルですね」

 冠婚葬祭のなかでも、こと葬式においては、依頼者が大切な人を失っているがゆえに情緒的にナーバスになっていることが多い。

「精神的に肉体的に疲れている遺族を気遣い、負担を減らすために情報を取捨選択して伝えたつもりが、結果的に言葉足らずになるケースも」

「言葉や表情に非常に気を遣います。小さな言い間違いやミスが大きな問題に繋がりやすいんです。説明させていただいたはずでも、ご遺族がそのお話を聞けるような状態ではないことも。大切なことは紙などに残したり、ゆっくり繰り返し説明するようにしたりしています」

 また、こうした「新品と取り換え」で弁償できないサービス業においては、他業種以上に「カスハラ」が横行しやすくなるが、やはり葬儀業は職業柄、とりわけ浴びせられる言葉が辛辣だ。

「知り合いの葬儀社では『(故人が)死んだのはお前のせいだ、返せ』と罵られたケースも。葬儀業のカスハラ対策は、感情労働のなかでも特に難しい部類に入るかもしれません」

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