香港・民主派「45人」に最高で禁固10年の実刑判決 最大規模の「国安法」裁判で争われた“予備選挙”とは何だったのか

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年明けの一斉逮捕

 だが、香港政府は7月31日、立法会選挙の延期を発表。「感染症の深刻さを考慮した結果、公衆の安全と公衆衛生を保護し、選挙が公開的かつ公正な方法で実施されることを保証するため」というのがその理由だ。約1年3カ月後の2021年12月19日に投開票されたこの選挙では、選管の事前審査で民主派が事実上排除され、直接選挙の議席数は20に削減。投票率は過去最低の30.2%を記録している。

 予備選挙の関係者55人の一斉逮捕は、年が明けた2021年1月6日の朝に行われた。別の事件で服役中だった黄之鋒氏ら以外は保釈され、2月28日に警察へ出頭。この際、8人を除く47人が国安法の国家政権転覆共謀罪で正式に起訴されたことから、「47人案(47人事件)」という言葉が生まれた。

 国安法裁判で初の国家政権転覆共謀罪、膨大な被告の数など、これまでの香港でありえなかったこの事件は内外から注目された。保釈申請に伴う約3日間の「マラソン審問」で体調不良者が出た件や、約2年間にわたる拘禁と取り調べなど、香港メディアはその経過を淡々と追い続ける。公判は2023年2月6日に始まり12月4日に結審。2024年5月30日、結審の時点で無罪を主張していた16人のうち14人に有罪の判決が下った。

さまざまな議論と反発

 11月18日に量刑を言い渡されたのは、この14人と先に有罪を認めた31人の計45人である。45人は「首謀者」(4人)と「積極的参加者」に分類され、「首謀者」の中でも戴耀廷氏が最も重い懲役10年、残る3人は6年1月から7年、「積極的参加者」は4年2月から7年9月だった。現在はこの量刑に至った法的解釈を含めて、さまざまな議論と内外からの反発が沸き起こっている。

 閉廷後、ある被告の養母は法廷外で「悪人は必ず滅びる」という書かれたプラカードを掲げ、警官に連行される間も「彼は良い人なのに、なぜ刑務所に入らなければならないのか」と叫んだ。また、「2026年9月に会おう!」「私の選択と行動は『香港が何であり得るか』という問いに対する私の答えです」といったメッセージをSNSに投稿した被告もいる。

 米国務省は19日、声明で45人と他の政治犯の即時釈放を求め、香港当局者に対する新たなビザ制限に言及した。英国ではキャサリン・ウェスト外相と最後の香港総督であるクリストファー・パッテン氏らが非難の声を上げている。被告にオーストラリア国籍の男性が含まれているオーストラリアでは、ペニー・ウォン外相が深刻な懸念を表明。さらに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は有罪判決の「緊急再検討」を求めた。

釈放までに新たな展開は?

 元香港大学法学部教授で米国人のマイケル・デイビス氏は「Radio Free Asia」に対し、「(量刑は)恐れていた極端な結果ではない」とした上で、問題とは「予備選挙自体は香港基本法に沿ったものであり、また実施過程に暴力が含まれていない点だ」と指摘している。

 なぜなら香港基本法では、行政長官と立法会議員は最終的に「普通選挙で選出される目的に至る」と明記されているからだ。デイビス氏は、予備選挙の目的は憲制秩序を守るためであり、普通選挙を実施しない香港政府の方が憲政の危機を招いていると断じた。

 拘禁期間も刑期に含まれるため、45人の一部は来年の上半期に、戴耀廷氏と別の暴動事件で服刑中の鄒家成氏は2032年に釈放される見込みだという。一方で保安局長のトウ炳強(クリス・タン)氏は、量刑の根拠を精査した上で、個別の被告について刑期の上訴を検討するとしている。

デイリー新潮編集部

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