中学受験は「鉄研」目当てで学校選び 意外に熱血?男子も女子も集う“鉄道愛”部活の知られざる魅力

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鉄研“強さ”の秘密は…顧問の先生に聞くと

 取材当日、部員たちは部室の掃除を行っていた。活動の最後には、全員揃って、ミーティングを行う。合宿に力を入れていることからもわかるとおり、文科系の印象が強い鉄研でも、その熱量は運動部にも負けない。

「野外に展示しているSLのメンテナンスも部員で行っています。SLの清掃や塗装は、なかなか経験できないことですよね。合宿の現地集合に関しても、生徒自らが決めた行程で行きます。そのために、日頃の部活に取り組む態度や自主性を、普段から指導しているつもりです。ほかの主な活動として『全国鉄道模型コンテスト』、『国際鉄道模型コンベンション』(通称JAM)に参加することがあります。JAMに参加したくて本校に入りたいという生徒もいました。『全国鉄道模型コンテスト』は、モジュール部門、レイアウト部門、車両部門の三部門ありますが、すべてにエントリーし、かつJAMにも参加する学校は、うちしかないという自負はありますね」

 というのは、顧問の小川賢一郎先生だ。芝浦工大中に赴任して11年目、鉄研の顧問になって4年目になる。ちなみに前任の顧問の柴田邦夫先生は、現在、芝浦工大中の校長を務めている。

 取材した部員からも、模型作りが楽しかったという声は多く聞こえた。「Nゲージで遊ぶようになったのは入部してから」(入澤さん)と、Nゲージや模型と無縁だった生徒も多い。コンテストに入賞できるような活動の秘密は、どこにあるのだろうか。

「部員のやる気もありますが、じつはOBの力添えも大きい。模型を運ぶためのトラックを出したり、レイアウトのアドバイスをしてくれています。結果、コンテストでは、最優秀賞や、理事長特別賞などを頂いたことがありました。僕はずっと野球部の顧問をしていたので、文化部とは縁がなかった。でも運動部も文化部も一緒で、なにか好きなことに打ち込めているのは素晴らしいことだと、生徒たちの姿を見ていて感じました 」

 運動部のような“交流試合”こそないものの、コンテストなどを通じて他校と交流する機会も多い。

「系列校である芝浦工大柏中高とはもちろん交流があり、城北学園がわが校の鉄研やギャラリーに見学に来たりしました。電車に乗ったり、写真を撮ることは、別に鉄研でなくても個人でできるのです。それでも鉄研に入る意味には、同じ趣味を持つ子たちが集まることができる場、という要素がすごく強いと感じています。普通なら、鉄道好きな子ってクラスにもあまりいないじゃないですか。そういう子たちが交流ができることは大きいと思いますね」

 小川先生は、生徒たちの変化を感じている。

「“鉄研変革期”だと感じているのです。昔は模型が作りたいという生徒が多かったのですが、最近は乗り鉄と呼ばれる、電車に乗ることが好きな子が増えてきた印象です。そういう生徒にとっては、合宿は最高に楽しいと思います。とはいえ、鉄研の基本はやっぱり模型製作が中心ですので、乗り鉄、撮り鉄、色々な子たちが楽しめる部活づくりをしていきたいというのが課題ですね。歴史ある部活なので、色々なことに挑戦できたらと思っています」

池守りぜね(いけもり・りぜね)
東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。

デイリー新潮編集部

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