中学受験は「鉄研」目当てで学校選び 意外に熱血?男子も女子も集う“鉄道愛”部活の知られざる魅力
学校に「機関車」を常設展示
では実際の鉄道研究会はどうなのだろうか。東京・江東区豊洲にある芝浦工業大学附属中学高等学校(以下、芝浦工大中)は、鉄道で働く人たちのための学校だった東京鐡道中学を母体としている。およそ50年つづく鉄研に力を入れている学校のひとつで、週5日の積極的な活動をしている。
校舎内には、『しばうら鉄道工学ギャラリー』という鉄道にちなんだコレクションや企画展示が鑑賞できるギャラリーが常設されている。『403号機関車』も学校の敷地に常時展示されており、まさに鉄道好きには、たまらない環境だ。
2024年度の入試倍率が4.3~6.0倍という人気校で、もともと男子校だったが、2021年から共学化した。 結果、中学生16名、高校生20名の計36名という大所帯の鉄研にも、中学生1人、高校生2人の女子部員がいる(※取材時、以下同)。
今年4月に鉄研に入部したばかりの中学一年生、入澤りみさんに聞くと、
「学校見学に来て、校舎が綺麗なことと、ギャラリーにすごいなって感動しました。他の学校を見学する時も、鉄研を見て回ったりしていました。部活に入りたくて受験勉強を頑張れた部分もあります」
鉄研と聞くと、どうしても男子校の文化部のイメージが強いものの、入澤さんはかなり早い時期から入部を決めていたという。
「模型作りに興味があったし、自分の気持ちも強かったので、鉄研に入部しました。同じ趣味を持つ気が合う友達が欲しかったこともあります」
中学二年生の森尾太一さんも同様に、鉄研が志望校選びの決め手となったという。
「元々は飛行機が好きでしたが、学校見学で鉄研を知り“世の中にはこういう部活があるのだ”と興味を持ちました。そこからは鉄研を意識するようになりました。入学してすぐに部活のオリエンテーションがありました。鉄研目当てで芝浦工大中に入学したので、ほかの部活には見学に行かなかったです」
鉄研が魅力だった「2校」しか受験しなかった
二人の鉄研への熱意は受験校にも現れていて、ともに芝浦工大中以外に受けたのは、鉄研がある学校だったという。森尾さんに至っては、鉄研が魅力でどうしても行きたかった2校しか受けなかったという徹底ぶりだ。
「受験は大変だったけれど、鉄道が好きとか個性的な人が多く、似たような仲間と一緒に話すことができて楽しいです。たとえば、鉄道好きのなかでも、好きな鉄道会社がぜんぜん違うのですよ(笑)。そういうマニアックな話ができるのもよかったです」(入澤さん)
「鉄研のなかには、僕よりも全然詳しい人もいますし、僕みたいに飛行機が好きな人もいたり、車に興味がある人もいるのです。そうやって似た趣味の人がたくさんいる部活って、やっぱり貴重だと思います」(森尾さん)
小4から塾通いを始めたという二人。厳しい中学受験の経験は、はたして良かったのだろうか。森尾さんは「入りたかった部活にも入られて、合宿にも行けたので受験をして悔いはなかったですね」と明るい表情を浮かべていた。
芝浦工大中の鉄研は、現地集合で行われる“合宿”もユニークだ。
「今年は合宿で東北地方に行ったのですが、函館集合でした。どうやって函館まで行こうかなって考えるのが楽しかった。先輩から“前日から東北本線を北上しようぜ”って言われて、フェリーで津軽海峡を渡るルートで行きました。これは鉄道研究部がある学校じゃないとできない経験だったので入部してよかったです」(森尾さん)。
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