北関東にハリウッドがあった!? 虚実ないまぜの原寸大「渋谷スクランブル交差点」が栃木県に誕生した謎に迫る

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藤井風や乃木坂46のMV撮影にも利用

 これまで同スタジオは、渋谷区の理解も得た上で、Netflix「今際の国のアリス」(シーズン2)の他、藤井風のMV「damn」や乃木坂46のMV「Wilderness world」など多くの作品で利用されてきた。

 2023年は17~18件の撮影実績を誇るというが、「運営当初は、ちょうどコロナ禍を迎えたためまったく利用されず苦しいスタートでした」と明かす。しかし、このピンチをチャンスとしてとらえ直した。

「“人のいない実際のスクランブル交差点”を撮影するなら今しかないということで、コロナ期間にCGの素材用として写真や映像を撮り溜めていました。我々はグリーンバックに合成する素材も作っているので、きっと役に立つ日が来るだろうと」(町田さん)

 オープンセットに加え、背景のCG合成素材も用意する。コロナ禍が落ち着くにつれ、「足利スクランブルシティスタジオ」のニーズが増えていったのは必然だったのだろう。また、「地元の幼稚園の子どもたちを招いて、横断歩道の渡り方の講習などもしています」と町田さんが話すように、商業用以外でも使われるそうだ。なんというスクランブル交差点の贅沢な使い方。本物のスクランブル交差点では、誰一人手を上げていないというのに!

車で10分の距離にある、もう1つの「有名ロケ地」

 同スタジオの特徴は、あくまでオープンセットに特化しているという点だ。JRなどの企業の表記はない。また、管理棟や控え室もなく、提供するのはあくまでスクランブル交差点のみ。利用する制作スタッフが、もろもろを用意しなければならない。だが――。

「我々が運営しているわけではないのですが、『足利スクランブルシティスタジオ』から車で10分ほどの距離に旧足利西高校という廃校があります。ここを待機場所とするケースも少なくなりません」(町田さん)

 実は、この旧足利西高校もロケ地のメッカで、これまで使用されてきた作品数はなんと200を超えるという。「水球ヤンキース」、「今日から俺は!!」、「ナンバMG5」など数々の映画やドラマをはじめ、「Y!mobile『転校生』編」といったCMや嵐の「夏疾風」などのMVまで、多岐にわたって協力。一連の話を聞いていた私は、「北関東にハリウッドがあったとは夢にも思わなかったですよ」と感嘆の声をあげていた。「足利スクランブルシティスタジオ」がこの地に誕生したのも、必然だったのかもしれない。

 昨年は、コロナ禍が明けたこともあり、3年ぶりに一般公開をした。なんでも、来年3月2日に再び一般公開されることも決まったそうだ。

 町田さんは、「定期的にできるかどうかは分からない」と明言を避けるが、こんなに面白い場所はそうそうないので、多くの人が訪れる機会を期待してしまう。「足利スクランブルシティスタジオ」を含む足利市は、「北関東のハリウッド」なのだから。

我妻 弘崇(あづま ひろたか)
フリーライター。1980年生まれ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターに。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

デイリー新潮編集部

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