北関東にハリウッドがあった!? 虚実ないまぜの原寸大「渋谷スクランブル交差点」が栃木県に誕生した謎に迫る

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 2019年、栃木県足利市に誕生した「足利スクランブルシティスタジオ」は、映画やドラマ、ミュージックビデオなど映像作品の撮影に使われている大型オープンセットだ。Netflix「今際の国のアリス」に登場する渋谷のスクランブル交差点は、この地で撮影されている。実際のスクランブル交差点とほぼ原寸大。駅の改札口や道路、横断歩道まで忠実に再現し、日の当たる角度が同じになるよう東西南北まで合わせたという。どうして、この地に渋谷のスクランブル交差点は生まれたのか? その背景を聞いた。【我妻弘崇/フリーライター】

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作られた背景には“渋谷ならでは”の事情が

 がらんとしたスクランブル交差点が視界に飛び込むや、「駅前の交番から横断歩道の信号機までってこんなに距離があった? ものすごく遠く感じない!?」と、私は興奮気味に口にしていた。

 引っ越しを終え、今まで住んでいた部屋がもぬけの殻になったとき、「こんなに広かったっけ?」と多くの人が感じるのではないかと思う。私たち取材班は、その感覚に限りなく近いものを感じていた。

 人のいない街を歩くことなど、早朝や真夜中でもないかぎりできることではない。あるいは、映像や写真の世界なら、アプリやCGを使うことで誰もいない街を作り出すことができるだろう。

 しかし、「足利スクランブルシティスタジオ」は、人はおろか、商店すら存在しないほぼ原寸大のスクランブル交差点がリアルに広がっている。人にぶつかることを気にする必要もなければ寝そべることだってできる。なんだったらインタビューだってできてしまう。異なっていることと言えば、見渡す限り平野が広がり、あるはずのない渡良瀬川がすぐ近くを流れていることだろうか。その違和感すらも高揚感だと錯覚した私たちは、「裏世界のスクランブル交差点に来てしまった!」と、しばらくこの世にも奇妙な世界を漂っていた。

「『足利スクランブルシティスタジオ』は、もともとは中国資本の大作映画を撮影する際に作られたものです」

 そう語るのは、足利市に委託される形で同スタジオを運営するギークピクチュアズの町田剛さんだ。渋谷のスクランブル交差点は激しい通行量を有するため、国内外の作品問わず、撮影許可が下りることがほとんどない。

 そこで、「だったら作ればいいじゃないか」と中国の制作会社は考えたわけである。いかにも中国的な考え方だが、そのダイナミックな発想には少しあこがれを抱いてしまう。

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