高齢者と外国人は優遇するのに…鉄道会社はなぜ「若者」にだけ冷たい? 「青春18きっぷ」改悪問題のウラで囁かれる「サービス格差」
若者の鉄道離れが進んでしまう?
まもなく発売開始となる格安旅行の定番「青春18きっぷ」。この冬の発売分から、従来の仕様とはまったく別物の切符になり、使い勝手が悪化するとして、ネットでは“改悪”だと騒動になっている。国鉄時代から歴史をもち、ほとんどシステムが変わってこなかった切符の大改変ということもあって、連日ネットニュースでも報じられている。
鉄道会社の社員からも、賛否両論、様々な意見が飛び交っている。筆者のもとには、「システム改変で駅員の手間が省けるので歓迎」という意見や、「廃止してほしい」という厳しい意見も寄せられているが、なかには「改悪は問題」「鉄道に乗る人が減るのではないか」と不安視する声も上がる。
特に、若者の鉄道離れが進む可能性を指摘するのは、現役のJRグループの社員である。というのも、現在のJR各社が発売するフリー切符は、若者向けの商品が非常に少ないのである。確かに、シニア層には「大人の休日倶楽部パス」が、インバウンドには「ジャパン・レール・パス」というフリー切符が発売されている。ところが、若い世代に向けたフリー切符は青春18きっぷくらいしかないのだ。
シニアとインバウンドには大盤振る舞い
とはいえ、青春18きっぷは年齢を問わず利用できるため、厳密にいえば若者をターゲットにした切符とは言い難い。その点、客層を限定した前出のシニア向け、インバウンド向けの切符は大盤振る舞いと言っていいほど割引率が高く、特急や新幹線にも乗車できる。若者をターゲットにした、そこまでの恩恵を受けられるフリー切符は、ほぼ存在しないと言っていい。
2020年に始まったコロナ禍は3年以上にわたって続いたが、2024年現在、もはや人々がそんな騒ぎを忘れ去っているかのように、観光地は、人、人、人である。そして、東北地方の温泉地などがシニア層で激しく混雑するのが、大人の休日倶楽部パスの利用期間である。JR東日本の観光地の駅に勤務する駅員はこう話す。
「大人の休日倶楽部パスは、使用可能な期間には新幹線が大混雑し、各地の観光地の駅がシニアで溢れるほど人気のきっぷ。こういった切符が定期的に出ている反面、若者が駅に押し寄せている光景は目にしません。若者は鉄道から高速バスなどに流れている。若者とシニアでは、旅行手段にかなりの格差があると感じずにはいられません」
大人の休日倶楽部パスが安すぎる
では、大人の休日倶楽部パスがはどれだけお得なのか。この冬は2024年12月16日に発売され、2025年1月16日~28日まで利用できるようだが、連続する5日間、JR東日本全線や東日本エリアの第三セクターなどの路線を利用できる。青春18きっぷと異なるのは、新幹線の普通車を利用できる点だ。
それだけの特典がついてもたったの1万9800円であり、「えきねっと」で購入すれば1万8800円なのである。ちなみに、連続する5日間使える青春18きっぷは、1万2050円だ。購入するためには一定の年齢になり、大人の休日倶楽部の会員になる必要があるが、元を取るのがとにかく簡単なので「鉄道ファン垂涎の切符」と言われることもある。
大人の休日倶楽部の公式サイトによると、1万8800円でパスを購入した場合、東京と新青森を新幹線で単純往復するだけで、なんと1万2780円も安くなるのである。利用期間は5日間連続となっているが、こんな単純往復で元が取れるのであれば、1日だけ日帰り旅行をする目的に使っても十分である。青春18きっぷと違って、かなり余裕のある旅程を組むことができるのだ。
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