タイ伝統の「灯ろう流し」が招くゴミ問題 今年も回収50万基…“オンライン化”もある祭り事情
今年のロイクラトンはどうだったのか
その効果はあるのか。今年、チャオプラヤー川沿いのロイクラトンスポットを訪ねてみた。大変な人混みだった。灯ろうを手にした人たちで通路は混雑し、なかなか川べりに近づけないほどだった。女子大生3人組は、それぞれ灯ろうを持っていた。
「ゴミ問題知ってます。SNSでもいろんな投稿があって。自然素材の灯ろうを探したけど売っていなくて……」
3人が手にしていたのは、発泡スチロール土台の灯ろうだった。
政府はオンラインロイクラトンの普及にも力を入れた。これは無料で登録でき、灯ろうを流す川や池34ヵ所のなかからひとつを選び、数種類の灯ろうアイコンを選択。名前と願いごとを書いて送信すると、灯ろうが画面の水面に浮かぶというスタイル。自分の灯ろうを探すには、ひとつひとつタップしなくてはならないが。
世界のどこからでもアクセスできるため、日本人のなかにも参加した人もいた。そのひとりAさん(28)は、「日本からロイクラトンができて感激。自分の灯ろうを探すのがゲームをしているようで面白かった」と語っていた。
政府の発表では、今年は3万6832個の灯ろうが流されたという。
日本の「灯篭流し」はどうしている?
運河から回収されたプラスチック廃棄物からつくった灯ろうも話題になった。これは川や池ではなく、プールのような大きな特設水槽に浮かべるもので、翌年も再利用されるという。
行政のPRもあり、今年、回収された灯ろうは51万4590基と、昨年より12万基以上減った。
しかしこの減少は、灯ろう代が高くなったためという意見もある。2022年には1基50~60バーツ(約225円~約270円)だったが、いまは100バーツ(約450円)はする。チャオプラヤー川沿いで灯ろうを売っていた業者はこうもいった。
「政府がいろいろ規制すると、どうしても灯ろう代が高くなる」
オンラインロイクラトンに参加したLさん(35)も、「灯ろう代が高すぎます。それに人混みはあまり好きじゃないのでオンラインを選びました」という。
ちなみに、日本はどうしているのか気になった。毎年8月に福井県で行われる「永平寺町大燈籠ながし」は日本最大規模の灯ろう流しで、1万基弱の灯ろうが九頭竜川に流される。
永平寺町役場によると「下流数百メートルにある中洲付近ですべて回収し、翌朝、永平寺で『お焚き上げ』の儀式が行われます」とのことだった。