「まだ実力の半分しか出していない…」 元ロッテ監督「井口資仁」氏が語る「佐々木朗希」秘話 初対面の席で打ち明けられた“驚きの目標”とは?
自分で通院
井口:チームドクターやコンディショニングディレクター 、トレーニングコーチ、そして我々首脳陣や球団も含めて、怪我をさせずに朗希を成長させていく育成プランを立てました。それに沿って我々現場はやっていましたし、ドクターやトレーニングコーチ、トレーナーの意見も加え、このトレーニングにしようとか、投げた後に体はどうなのかとか、チェックしながらやっていました。
――2022年、プロ3年目となる佐々木は、念願の開幕ローテーションに加わった。
井口:朗希もオフシーズンが終わった時点で、次の開幕までに自分をどう持っていったらいいのかをトレーニングコーチに言っていて、どういうプログラムにするかを相談していました。また、ローテーションを含めたなかで、投げた翌日は自分のケアだったりルーティーンだったり、そういったものをしっかり持ちながらやっていました。ちょっとでも違和感があれば、必ず相談したり、病院に行ったりと、自分の体に関して細かに感じ取れる選手でしたね。
――高校時代の佐々木は最速163キロの剛速球で注目されたが、甲子園には一度も出場していない。最も注目されたのが、高3の夏の岩手県大会の決勝で監督が投げさせなかったことだ。この時も「投げさせるべき」「将来にために無理はさせるな」と賛否が渦巻いた。
井口:朗希は特にスピードボールを投げる投手なので、怪我のリスクは非常に高い。そのあたりは他の選手とは別に見ていかなくちゃいけないところはあったと思います。
幻の2試合連続完全試合
――2022年4月10日、オリックス・バファローズ戦で、1994年の槙原寛己(巨人)以来28年ぶり、史上16人目となる完全試合を達成する。さらに、中6日で17日の北海道日本ハムファイターズ戦に先発すると、8回まで完全投球を続けたものの降板。2試合連続完全試合の偉業は達成できなかった。当時、監督の井口氏にも批判があったが……。
井口:朗希から申し出があったんです。2度とないような記録を目前にして、我々も達成させてあげたいっていう思いはもちろんありました。でもそれ以上に、彼は怪我をして自分の将来を棒に振ってしまうとか、目の前の記録よりもその先の目標を見ているんです。我々も彼の将来を考えると降板させるべきだと思いましたから、7回の時点で「ちょっと厳しいかな」という話を朗希ともしていたし、「8回までは行けます」と言うので、それが終わった時点で交代したんですよ。
――その後、佐々木は調子を落とした。
井口:夏以降、調子を落としましたから、その2試合でかなり負担はかかっていたんだと思います。オリックス戦の完全試合の後、普通であれば次の試合はもう少し楽に投げさせてあげたいところなんですが、それでも8回まで投げました。9回も投げて、もし2試合連続完全試合を達成していたら、その後、怪我をしていたかもしれません。ですから、僕は今でも、あそこで代えて良かったと思っているんです。高校の時に決勝で投げさせなかったっていうのも、たぶん同じことだと思います。皆さん、記録は見たいでしょうけど、我々としたらさらに大きくなった朗希を見たいですから。
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