2場所連続全休、「横綱は弱くなった」と若手に言われても…「照ノ富士」が引退できない“厄介すぎる理由”

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 一年納めの大相撲九州場所(福岡国際センター、定員6980人)が28年ぶりとなる全日程完売の大賑わいを見せている。これで角界の頂点に立つ1人横綱・照ノ富士が土俵に上がっていれば――そう思った相撲協会関係者は少なくないだろう。満身創痍の横綱は協会の大看板である責任を果たすべく、福岡入りして最後まで調整を続けていたが、結局は今場所も休場した。2場所連続、横綱在位20場所で12度目、力士生活では通算23度目の休場になる。今年の年6場所で皆勤したのは優勝した初場所と名古屋場所のわずか2場所だけだ。32歳という年齢、長年苦しむ両膝の変形性関節症に加え、ここ最近は糖尿病の悪化もあるだけにいつ引退しても不思議ではない。しかし、そこには辞めるに辞められない事情が山積している。

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 九州場所のフル出場に向けて照ノ富士は秋巡業(10月1日~27日)に参加した。今年は相撲人気も手伝って25会場を27日間で回る強行日程。しかし怪我の影響で、他の力士に稽古をつけたり、相撲を取ったりすることはなく、土俵入りを披露したのみ。しかも21日に「膝痛と糖尿病で1週間の加療が必要」という診断書を出して途中離脱。25日から復帰して何とか最後まで務めた格好だ。しかし、意地や責任だけで務められるほど横綱の地位は甘いものではない。

「今年の5月に横綱に稽古をつけてもらったある力士は、“これまであんなに横綱が軽いと思ったことはない”と話したそうです。同じような感想を漏らす力士は他にもいました」(相撲担当記者)。

 「弱くなった」と言われているようなもので、綱の威厳が失われかねない衝撃的なコメントだ。それでも、その後の7月の名古屋場所を12勝3敗で制している。長年の土俵生活で築き上げた技術の賜物だろう。照ノ富士本人は体調に関して聞かれると「いつもと同じ普通だよ」との一言を発するのみだ。

伊勢ケ浜親方の定年

 照ノ富士は既に32歳。満身創痍で糖尿病も抱えている。優勝回数も2桁の10回に乗せ、「成すべきものは成した」状況だ。それでも照ノ富士がすぐに引退できない大きな要因に「親方株」の問題がある。

 照ノ富士は大関昇進後に怪我や体調不良による休場で序二段まで陥落した。再び大関そして横綱まで上り詰めた史上初の力士でもある。彼を手塩にかけて育て、苦難を共にした伊勢ヶ浜親方(元横綱・旭富士)との師弟愛は有名で、関係は盤石だ。2021年8月、照ノ富士は日本国籍を取得したが、その際、姓に伊勢ヶ浜親方の「杉野森」をもらったほど。その伊勢ヶ浜親方は、来年5月場所を最後に7月で65歳の定年を迎える。それを機に照ノ富士が引退し、伊勢ヶ浜の名跡を継ぎ、部屋を継承する――これが自然な流れだ。

 しかし、

「現状、照ノ富士は親方株を所持していないと見られます。つまり、伊勢ケ浜親方と交換する株がないのです」(夕刊紙記者)

 すると、照ノ富士が引退後も協会に残るためにはどうすれば良いのか。

「伊勢ケ浜親方から株を譲渡してもらう。しかし、協会には、定年を迎えた親方は、70歳までそれを延長できる制度があります。定年延長の道を選べば、定年前と比べて減りはしますが、年1000万円程度の収入が得られます。伊勢ケ浜親方も延長を希望していると見られ、この場合は調整が困難です」

 それが難しければ、

「相撲界では横綱は引退後、四股名のままで5年間は協会に親方として在籍できる特例があります。現在は親方株を持たない照ノ富士も、引退して5年間は残ることが出来、この間に株を得るという手もありますが、現在、105ある名跡のうち、確実に空席なのは2、もしくは3つと言われています。照ノ富士といえども、5年間のうちにそれを得られる保証はない」

 取得するための期間を少しでも長く確保するため、ギリギリまで引退を遅らせるのが肝要という。

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