口の中に注射針をブスリと刺して 歯科衛生士さんの“新しいお仕事”

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 アンドロイドのような模型を腕に抱き、その口の中に注射を打っているのは歯科衛生士の女性。白衣姿でないのは、11月4日、都内で行われた「歯科麻酔および救急蘇生講習」の場だからだ。

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 いったいなぜ歯科衛生士が麻酔の講習を?と思うのは当然かもしれない。一般に、歯科衛生士が行うのは医療補助や歯周病診断などで、麻酔注射は歯科医師の仕事と思われている。しかし実際は、歯科医師の指示があれば衛生士が麻酔処置をすることは法的に認められているのだ。

 講習を実施した一般社団法人国際歯科医療協会(IDMA)の長谷川悠子理事長はこう話す。

「歯科衛生士を巡る環境には、有資格者の半数が休職中であることや給与が安いことなど、数々の問題があります。まずは学びの場を提供し、衛生士の職域の幅を拡げることを目的にこの6月から活動しています。今回の講習はその一環です」

 歯科衛生士が歯科麻酔を行えれば、本来の職域である歯石除去中などに麻酔が必要になった際、他の患者を治療中の歯科医師の手を煩わせずに処置を継続できることになる。

「ただし、それには歯科医師の理解が必要不可欠なのです」(同)

 そのため、この日の講習には歯科衛生士だけではなく、歯科医師を含めた60人が参加。歯科麻酔の法的解釈などを学ぶ講義や、歯科麻酔および救急蘇生術の実習を行った。

 歯科医でIDMAの最高顧問の山崎長郎(まさお)氏は講習の意義をこう語る。

「まだ歯科衛生士による麻酔注射は当たり前とはいえませんが、受講者が増えることで、これがポピュラーになればいいと思います。衛生士一人でより高度な歯石除去が可能になるうえ、彼女らの地位や待遇も向上する。歯科医師も治療に専念できるようになる」

 来年以降も開催される予定だ。

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