八百長に賄賂、バブル崩壊で「習近平」W杯優勝の野望も無惨…中国サッカーはなぜこんなに弱いのか

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 2026年ワールドカップ最終予選で日本代表は中国代表と対戦し、完全アウェーの敵地での試合ながら3-1で勝利を収めた。試合途中には、ファンがピッチに乱入するというハプニングまで起きた。その闖入者の胸には中国語で「夢を追え」「アリのような生まれであっても、鴻鵠の志を持て」と書かれていた。ネット小説「官策」の一説だが、ともあれ、なぜこれほどまでに中国サッカーは弱くなってしまったのか。【高口康太/ジャーナリスト】

「1対3で負けたけど、まあ良かったわ」
「少なくともやる気は見られた」
「日本から1点取った!枠内シュートが3本もあった!!ワールドカップ出場の可能性も消えていない!!!もう十分だわ……」

 2024年11月19日、サッカー・ワールドカップのアジア最終予選、日本代表対中国代表の一戦が、福建省アモイ市で開催された。中国は試合場のピッチ幅を狭く改造することで、日本が得意とするサイド攻撃をやりづらくするといった裏技を講じたものの不発。結局、3対1で日本代表が快勝する結果となった。しかも、終盤は日本代表が無理に攻めずボールをコントロールする時間が続き、点差以上に実力差を感じさせる試合内容となった……のだが、なぜか中国のサッカーファンから前述のようなポジティブな反応があがっている。

 というのも、9月に行われた日本開催の日本対中国戦は7対0で日本が圧勝。中国代表の守備は完全に崩壊し、得点どころか有効なシュートを打てる気配すらゼロで、ファンが大激怒したのだ。SNSは「代表を解散しろ」といった書き込みであふれた。

 そのため、今回の試合前には「大敗しなければ、もう勝利といってもいいのではないだろうか」という精神的勝利法が広がっていた。有名サッカー解説者も「中国代表の目標は4位に入ってのプレーオフ進出だ。トップ通過間違いなしの日本相手の試合なんて勝っても負けても関係なし。今日の試合は気楽に見よう!」といった予防線を張るなど、負けるための心の準備はできていた。

 結果、望外の1ゴールをあげられたこと、最後まで守備組織が崩壊せず闘志がくじけなかったことだけで、おなかいっぱいになったファンが多かったようだ。しかも、日本代表と中国代表が属するグループCは、日本が勝ち点16と独走する一方で2位オーストラリアが勝ち点7、その下はインドネシア、サウジアラビア、バーレーン、中国が勝ち点6で並ぶという超混戦で、中国代表にもまだまだチャンスは残されている。ファンにとってはワクワクできる時間が続くことも楽しいようだ。

問題点は「金と汚職」「不動産サッカー」

 それにしても、中国代表はいつからこんなに弱くなってしまったのか。日本代表は1993年のJリーグ発足を契機として、30年間にわたり実力を高めてきた。実は中国のプロリーグも1994年発足で、その歴史は日本とほぼ変わらない。が、実力差は開くばかりだ。

 2012年にサッカー好きの習近平氏が総書記に就任すると、国を挙げての強化体制が導入された。象徴的な動きとして挙げられるのが、日本の部活動をモデルにサッカー特色学校を作るというもの。若年層のプレイヤー人口を増やす狙いで、現在5734校が指定されている。「2025年までに5万校」という目標にはほど遠いとはいえ、それでも中国全土で相当数の高校生がサッカーに取り組んでいるわけだが、現時点では効果が上がっている気配はない。

 中国のサッカーファンに言わせると、問題点は「金と汚職」なのだとか。まず、金についてだが、中国経済が爆発的な成長を続けるなかで、知名度をあげたい企業が大金を払って中国のサッカーチームとスポンサー契約を交わし、選手の年俸も高騰していた。特に2010年代には金満不動産デベロッパーが台頭。不動産危機の引き金を引いた恒大集団を筆頭に富力、緑地、華夏幸福、佳兆業といった名だたる不動産デベロッパーが続々と参入している。2020年時点ではトップリーグ所属の16チーム中、15チームのスポンサーが不動産関連だった。「不動産サッカー」といわれたゆえんだ。

 その金満パワーによって選手の年俸も高騰。2019年の選手の平均給与は、実に121万ドル(約1億8000万円)にまで上昇したのだ。さらに世界的な外国人選手も続々と加入。元ブラジル代表のオスカルは2017年に英プレミアリーグから中国に移籍したが、その年俸は2000万英ポンド(約39億円)、当時としては世界一だったという。

 金があるのは悪い話ではないはずだが、問題は中国での成功で満足してしまい、海外志向がなくなってしまうことにあるという。若い選手が次々と欧州のトップリーグに挑戦し、代表のレベルを引き上げている日本とは好対照だ。しかも、不動産危機に伴って中国サッカーのバブルは崩壊。金欠に苦しむチームばかりとなった。とはいえ、海外移籍する中国人選手が増えれば、中国代表の実力の底上げにつながるという考え方もある。その意味で、中国代表の足かせが一つ外れたと喜ぶべきなのかもしれない。

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