インドが「中国重視」に方向転換せざるを得ない事情 「タージマハル」がスモッグで消える…深刻な公害や食品価格の高騰で高まる国民の不満

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タージマハルがスモッグで消える

 インド政府は11月14日、首都ニューデリーでの不要不急の建設工事や暖房用の石炭燃焼を禁止するという異例の大気汚染対策を発令した。

 近郊の農地での野焼きに加え、10月31日に行われたヒンズー教の大祭「ディワリ」で爆竹などが大量に使用され、インド北部の大気汚染が深刻化したからだ。インドが誇る世界遺産、タージマハル(総大理石の墓廟)がスモッグのせいで見えなくなってしまうなど、汚染の深刻さを示す事例は数知れない。

 13日、ニューデリーの一部ではPM2.5(微小粒子状物質)の濃度が806マイクログラム に達した。世界保健機関(WHO)が定める最大値の50倍以上だ。地元メディアは、大気汚染の影響でインド人の平均寿命が5.3年も短くなっていると報じた。首都近郊の住民は11.9年分だという。

 下水処理の不備で河川の汚染も進み、ニューデリー中心部を流れるヤムナ川のほとんどの流域が有毒な泡に覆われている。政府の無策に抗議の意を示すために沐浴した政治家が入院する事件まで起きているほどだ。

「消費」は流行遅れになった?

 視界が不良なのは空気や水だけではない。景気の先行きもあやしくなっている。

 インドの10月の消費者物価指数(CPI)は前年比6.21%上昇し、1年2カ月ぶりの高い伸びとなった。約半分のウエートを占める食品が前年比10.87%上昇し、11月もこの傾向が続くと見込まれている。

 食品価格が賃金の伸びを上回るスピードで上昇を続けているため、インドの中間層の購買力は大きな痛手を被っている。

 都市部の住民がクッキーやファストフードに至るまであらゆる支出を切り詰めている状況について、食品業界からは「消費は流行遅れになっているかのようだ。中間層は縮小している」との悲鳴が聞こえてくる(11月13日付ロイター)。

 インドの中間層は公式に定義されていないが、人口14億人の3分の1を占めるとの見方が一般的だ。その旺盛な消費に世界は注目してきたが、食品価格の高騰が災いとなり急減速している。

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