「娘はフェイク情報を信じて拒食症で死んだ」「同級生が違法薬物にハマり行方不明に」 豪「SNS禁止法」の深刻過ぎる背景
親の同意があってもSNSへのアクセスを禁止
国家がSNSを禁止する世界初の法律が具現化しようとしている。実際は16歳未満という限定が付くが、そこにこそ、かの国が抱える恐ろし過ぎる現実があった。ネットが引き起こす数々の病理的な出来事。日本も対岸の火事とばかりに無関心ではいられないのだ。
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【写真を見る】殺人、イジメ自殺に薬物 SNSにハマる若年層の行動が社会問題となっているオーストラリア
今月末をめどに、オーストラリアの議会に提出される見込みの「SNS禁止法案」。対象となるサービスは、旧ツイッターのXやフェイスブック、インスタグラムや動画投稿アプリのTikTokと多岐にわたる。16歳未満の青少年は、たとえ親の同意があってもSNSへのアクセスを禁止する厳しい法案で、上下両院で可決すれば1年の猶予期間を経て施行される。
親や子供など利用者側に罰則規定はないが、SNSサービスを提供する事業者へは16歳未満のアクセス防止措置を義務付け、違反すれば罰金を科すというのだ。
拒食症で自殺するケースが続出
今回のSNS禁止法案が生まれるきっかけの一つとなったのが、昨年4月の少女自殺事件だという。
「ビクトリア州に住んでいた15歳のエヴァンスさんは、学校でイジメを受けて拒食症となり、SNSの“1日に200キロカロリーで健康に暮らせる”などといったニセ情報をうのみにして症状が悪化。将来を悲観して自ら命を絶ったのです。彼女の父親は“いくら私が本当のことを助言しても、娘はネットの話しか信じなかった”と嘆き、現在は反SNS運動の中心メンバーとなっています」(外信部記者)
同様の事件は他にもあると話すのは、現地事情に詳しいジャーナリストである。
「筋骨隆々の体に憧れた14歳の少年が、筋トレ指南の動画に熱中した挙句、拒食症となり自殺する事件も起きました。SNSで評価されるたくましい体と、自分の姿のギャップに苦しみ、過度なダイエットが原因で体重が25キロ減少して入院。それを揶揄した友人たちが、SNS上で“自殺しろ”というメッセージを送っていたのです」
ただでさえ視野が狭くなりがちな子供が、SNSによって良からぬ方向へと導かれてしまうのだ。
“人気者でないと人間の価値がない”
「ウチの息子は中学2年生ですが、小学校時代の同級生で問題行動を起こすようになった女の子が行方不明で、警察沙汰になっています」
そう話すのは、現地で13年間暮らしている40代の日本人女性である。
「息子の話では、行方不明の女の子は小学3~4年生くらいの時にTikTokを始めて、ダンスを踊って投稿するなど、ものすごくハマっていた。小学6年生の頃には、“人気者でないと人間の価値がない”という考えに染まり、クラスでも人気のある人の話は聞くけど、そうでない人とは付き合わない。そうやって周囲の人をジャッジするようになってしまったそうなのです」
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