既婚者なのを隠して「28歳の女性」と不倫、別れは手紙で一方的に…「言う必要ないかと」45歳夫の罪

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最後はドロ沼に

 紗綾さんに結婚していることを言えなかったのは、言う必要がないと思っていたからだと彼は一貫して言っている。なぜなら紗綾さんとは結婚を考える関係ではなかったから。弁護士同士の話し合いで、そこが糾弾された。

「そのうちもめごとがあるのを会社に知られました。紗綾が会社にバラしたみたいです。ヤケになりかけましたね。でもそこで踏みとどまったのは息子と、キャンの存在だった。キャンは長いこと留守にしていたのに僕を忘れず懐いていたんです」

 結局、彼は200万円を紗綾さんに支払うことで示談とした。最後に彼女からの要請で、弁護士立ち会いのもと顔を合わせたのだが、彼には何の欲求もわかなかったという。それがひどく寂しかったと彼はつぶやいた。

「その後、妻からは離婚届をつきつけられました。でも、僕に最後のチャンスをくださいと頼んで、離婚届は出したけど同居している状態です。妻は最低限しか口をきいてくれないけど、息子の前では仲のいい両親を演じています。ただ、息子も来年中学に入るので、復縁するのか別居するのかはっきりさせないといけないわねと妻に先日、言われたところです。息子とは離れたくないんですが……」

あれは何だったのか…

 落ち着いている、というか感情の薄そうな允紀さんが、どうにもならないくらい紗綾さんに情熱を燃やしていた時期があったというのがどこか不思議だ。率直にそう言ってみると、彼はクスリと笑った。

「僕自身もそう思います。あれは何だったのか、本当に熱病みたいだった。それが恋というものだと弁護士さんに言われました。人生狂わせる人もいますよって。でも思うんです。そんな経験、何の役にも立たないなって」

 確かに恋から学ぶことなど、ほとんどない。熱情に任せて、翻弄したりされたりしながら、相手と心通わせた喜びに打ち震えても、最終的には別れが訪れるのだから。現実を超えたところで「ぶっ飛んでいた」経験がその後の人生の役に立つこともない。

 それでも……。それだけの恋をした。その事実が存在することだけで生きる支えの一環とはならないだろうか。

「慰めてくれてありがとう」

 彼は礼儀正しくそうつぶやいた。

 ***

 結局、允紀さんが心を許せたのは“クン”だけだったのかもしれない――その出会いと別れは【前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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