既婚者なのを隠して「28歳の女性」と不倫、別れは手紙で一方的に…「言う必要ないかと」45歳夫の罪
【前後編の後編/前編を読む】離婚理由は「妻が愛犬に嫉妬して」 “クン”に救われた元・不良夫の孤独な人生
複雑な生い立ちゆえにグレていた池谷允紀さん(45歳・仮名=以下同)を救ったのは、面倒見のいい警察官と地元の寺の和尚、そしてケガをした一匹の子犬だった。「クン」と名づけたその犬は、允紀さんにとってかけがえのない存在に。後に結婚した際にも連れて行ったが、妻がクンに心無い仕打ちをしていたのを知り、結果、離婚してしまう。允紀さんが33歳の時にクンは亡くなるも、寂しさに耐えられず、同い年の由佳里さんとできちゃった婚をした。
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【前編を読む】離婚理由は「妻が愛犬に嫉妬して」 “クン”に救われた元・不良夫の孤独な人生
職場の人たちが結婚パーティをしてくれた。前の結婚のときはみんなに黙ってしてしまったのだが、今回はきちんと紹介した。かつて世話になった警察官と和尚も呼んだ。
「息子が生まれて、交際0日の由佳里ともうまくいっていました。男女という感じより、最初から父母という役割から関係ができたから、かえってお互いに腹がくくれたのかもしれません」
それからも允紀さんは勉強を続け、建築関係のいくつかの資格を得た。息子が小学生になったころ、彼は転勤を持ちかけられた。正しくは「転勤」というより、社長の知人の会社への助っ人だった。
「僕がもっているいくつかの資格を全部もっている人間がいない、しかも現場を仕切れる人が急病になったそう。その会社の社長が、うちの社長と昵懇らしくて。信頼できるヤツを送り込んでやりたい、頼めないかと言われて。期間は2年。妻に相談したら『そこまで信頼されるなんてすごい。あなたが行きたいなら私は大丈夫』と言ってくれた。由佳里と出会って僕はすっかり落ち着いたんです。愛情を押しつけるようなこともしないし言わない。でも肝心なところで僕の気持ちを尊重してくれる。クンに命を救われ、妻に真人間にしてもらった。そんな気がします」
帰宅すると子犬が
自宅から3時間近くかかるその現場へ、彼は単身赴任となった。週末は基本的に休みなので必ず自宅に戻ると約束した。
「1ヶ月くらいたったころですかね、帰宅したら家に子犬がいたんです。びっくりしました。クンにそっくりだった。捨てられた犬を息子が拾ってきたそうです。ケガをしていたから病院に運び込んだことまでクンと同じ。また犬を飼うのは怖かったけど、息子がきょうだいみたいに仲よくしているのを見て、ちょっとうれしい気持ちもありました」
息子は、「キャンキャン鳴いたから、名前はキャンにしたんだ」と言った。クンクンじゃなくて、キャンキャンだったのかと彼はひとり心の中で微笑んだ。クンとのことは妻にも詳細を伝えてはいなかった。
「それからは週末、帰宅するのが、より楽しみになりました。キャンはクンに似ていたし、犬を溺愛する息子に自分を重ねていましたね」
人生をしっかりきちんと自分の足で歩いている実感があった。40歳すぎて初めての感覚だった。
「派遣先もとてもいい会社で働きやすかった。社長が苦労人で情がありました」
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