離婚理由は「妻が愛犬に嫉妬して」 “クン”に救われた元・不良夫の孤独な人生

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「犬はクンだけでいい。でも寂しい」

 1年もたたずに離婚、またクンとふたりの生活が始まった。だが離婚から2年、33歳のときにクンが死んだ。

「病気がわかってから半年、必死に生きたけど最後は僕の腕の中で逝きました。クンのおかげで僕はヒトとして生きることができた。当初はいっそ僕も死んでしまおうかと思ったけど、クンに助けられた命、まっとうしなければと思うようになりました」

 彼にとって、クンは唯一の“家族”だった。だからこそ、クンを失って時間がたつと、寂しくてたまらなくなった。だが犬を飼う気にはなれなかった。

「ちょっと僕、おかしいんですかね。犬はクンだけでいい。でも寂しい。それで再婚しようと思ったんです。友人からは『犬より人間のほうが価値が低いんだな』と言われました。命という意味では平等なんだけどと言ったら、それでもヘンだって」

 職場の同僚が飲み会を開いてくれた。独身男性3人と女性が3人。合コンである。初の合コンで、彼は由佳里さんという同い年の女性に気に入られたそうだ。

「なんと僕がお持ち帰りされまして(笑)。そしてその1回で彼女は妊娠しました。僕も結婚したかったし、彼女は子どもがほしいと思っていた。お互いになんとなく、じゃあ、結婚しようかと。こんなに簡単に決まっていいのかと思ったけど、結婚なんて誰としても同じようなものなんじゃないかとも感じていました」

 むしろ濃厚な愛情などないほうがいい。淡々と生活していければそれでいい。ふたりで子どもをかわいがって育てよう。允紀さんはそう心に決めた。

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 ところがその後、允紀さんの元へ2匹目の犬がやってきて…彼の不倫事件のてん末は【後編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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