離婚理由は「妻が愛犬に嫉妬して」 “クン”に救われた元・不良夫の孤独な人生
【前後編の前編/後編を読む】既婚者なのを隠して「28歳の女性」と不倫、別れは手紙で一方的に…「言う必要ないかと」45歳夫の罪
タレント・女優の鈴木紗理奈さんが「騙され不倫」をしたとして同情を呼んでいる。離婚後、息子ファーストでがんばってきた彼女、交際相手の50代イケメン社長はすでに離婚が成立していると伝えていたそうだ。
【後編を読む】既婚者なのを隠して「28歳の女性」と不倫、別れは手紙で一方的に…「言う必要ないかと」45歳夫の罪
相手が既婚だと知らず、あるいは彼女のように「離婚している」と言われて恋愛に発展するケースは少なくない。
「僕の場合は、自分の弱さから相手に既婚であることを告げることができなかったんです。そのせいで彼女も妻も傷つけてしまった……」
そう話すのは、池谷允紀さん(45歳・仮名=以下同)だ。彼の生い立ちは少しだけ複雑である。生まれてすぐに両親が離婚、その後育ててくれた母方の祖母は、彼が中学生のときに亡くなった。母の妹夫婦に子どもがいなかったため引き取られたが、叔母の夫、つまり叔父が彼を軽んじた。
「叔父は小さな工場を経営していたんですが、どうも仕事がうまくいっていなかったようです。そんなときに食い扶持がひとり増えたから邪魔だったんでしょうね。僕は何をよりどころにして生きていいのかわからなかったから、結局、地元の不良たちとつるんでケンカしたりカツアゲしたりで警察に捕まったりもしました。『またか。いいかげんにしろ』と言いながらも温かい目で見てくれている警察官がひとりいて、彼に救われたんです」
ケガをした子犬
その警察官が非番の日、彼は地元の寺に連れていかれた。そこの和尚が、「自分も元はワルだった」という人で、なにくれとなく彼のめんどうをみてくれたらしい。
「そんないい人たちに恵まれながらも、やっぱりまっとうには生きられなかった。高校を中退して、今でいう半グレみたいな仲間に入って。それでも和尚は僕を見捨てなかった。あるときなど町で僕をみかけて追いかけてきましたよ。ちょうどワルやって逃げているときだったから、必死で走ったけど、どこまでも追いかけてくる。とうとう和尚につかまって警察に突き出されて」
なんとか鑑別所には行かずにすんだが、生きる目的も希望もない允紀さんに気力がわくこともなかった。寺に住まわせてもらって手伝うようになったものの、ふらふらと夜の町に出たくなる。そんなとき寺にケガをした子犬が紛れ込んできた。この犬が彼の人生を変えた。
「和尚に頼んですぐに動物病院に連れていき、数日入院。その後は僕が必死で看病しました。クンクンとせつない声で鳴くので『クン』と名づけて。こいつが僕の相棒になったんです」
和尚に世話をかけるのは申し訳ないと、クンの食費を稼ぐためにアルバイトを始めた。バイト代が入ると、クンにおいしいものを食べさせた。命を救うのは、また別の命なのかもしれない。彼とクンは一心同体だった。
「和尚に頼んで、地元の建設会社を紹介してもらい、働くようになりました。クンを連れていくこともあった。みんな和むんですよね。必死に働いて20歳になったときお寺の近くのアパートを借りました。クンは飼えないのでお寺においてもらいましたが、夜、お寺の玄関のクンの寝場所に連れていくだけ。たまに僕もそこで寝てしまうくらいだった」
[1/3ページ]