「サブウェイ」のオーダー方法が日本人に向いてない問題…“優柔不断”だけではない“もうひとつの原因”とは

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ちょっと上司に確認してきます

 サブウェイが日本でさほど店舗数を激増させない理由を分析した永田氏の意見には納得する。正直、サブウェイの注文方法は日本人にとっては選択肢が多すぎて、迷ってしまうのだ。それは、ピザの宅配チェーンのメニュー表にも如実に表れている。日本のピザチェーンは、「照り焼きチキンミックス」や「わんぱくグルメフォー」といった形で、あらかじめトッピングが決定されたメニューから選ばせたうえで、サイズと生地の厚さを決めさせる。

 アメリカでもこのような商品はあるものの、大手チェーン「リトルシーザーズ」は、公式サイトでは「Create your own」を真っ先に目にする左端に持って来るように、店が提案するピザというよりは、顧客が求めるカスタマイズを重視していることが分かる。そして、海外のピザチェーンのチラシ等を見るとトッピングをいかにするか? といった記述があるが、日本ではそれらがない場合もある。

 あくまでも店側が提案する商品を提供する形になっているのだ。実際、「デラックスピザにマッシュルームの追加ってできますか?」などと言おうものなら、「ちょっと……、上司に確認してきます」と言われることもある。だが、海外ではピザはトッピングやチーズの量は客の好みに合わせるというスタンスがあるため、トッピングリストもウェブサイトには掲載されている。

店員が「普通」と設定した食べ方こそ至高

 一体コレが何なのかと言えば、サブウェイが世界基準と比べると日本では普及しなかった理由が、「優柔不断が故にカスタマイズができない」に加え、日本人の奥ゆかしさに繋がるのではなかろうか。つまり、「店が提案するメニューは最善であろう。そこに異論を抱いては失礼である」という感覚を日本人は持っているのである。

 先日、私は当サイトにおける九州ラーメンに関する原稿で「九州の本場では東京の人が好む『バリカタ』はそれほど注文しない」と言及した。私は佐賀県在住だが、地元の人はラーメン屋でそれほど「バリカタ」は注文しない。だが、東京で九州ラーメンの店に行くと「バリカタ」の注文が目立つ。

 この記事に対するYahoo!ニュースのコメント欄、そしてXでの反応で多かったのは「店が『普通』と設定した食べ方こそが至宝である」というものだ。

 私自身、アメリカやタイでサブウェイにはよく行くが、「ハラペーニョペッパー、たくさん入れてね!」と言うと「ガッテンでー!」と店員は不敵に笑ってこちらに挑戦するかのように大量に入れてきたりもする。その多さにこちらが目を丸くすると相手は勝ち誇ったかのような表情をして「これ、ちゃんと食べるんだぞ。辛いぞ」などと言う。

極めてマジメ

 こうしたやり取りもサブウェイの魅力なのだが、多くの日本人にとってはこのような変幻自在の注文の仕方は難しいのではなかろうか。だからこそ、ピザチェーンでもガチっと固まった商品が存在するし、従業員もマニュアルを重視する。

 客も店員もあまりにも柔軟過ぎるサブウェイが日本では多少苦戦する理由というのはここにあるのではなかろうか。日本人はファストフードの注文においても極めてマジメで、「型」を重視しているのかもしれない。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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