「今、松本人志で笑えますか?」 復帰の時期を決めるのは「メディア」ではなく「視聴者」

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視聴者はメディアの思惑を見抜く

 ダウンタウンの松本人志(61)が8日、自らの性加害疑惑を報じた昨年末の「週刊文春」を巡り、発行元の文芸春秋などに5億5000万円の損害賠償などを求めていた訴訟を取り下げた。これを受け、松本のテレビ復帰の時期を具体的に報じるメディアもある。しかし、それを決めるのは視聴者である。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 松本人志の復帰問題。これは故・ジャニー喜多川さんによる性加害問題によって仕事の一部がなくなった旧ジャニーズ勢の問題と部分的に似ている。

 テレビ局を始めとするエンターテインメント系メディアは1日でも早く松本に復帰してほしい。旧ジャニーズ勢の場合もそうだった。

 その復帰によって視聴率増などのプラスが見込めるからだ。まして松本の場合は7本のレギュラー番組がある。

 それぞれの所属事務所である吉本興業、旧ジャニーズ事務所とエンタメ系メディアが近しいという事情もある。両事務所と各メディアは深く長い関係にある。

 松本が訴訟を取り下げた8日には早くも「12月22日にテレビ朝日で放送される『M-1』グランプリの審査員で復帰か」との文言がエンタメ系活字メディアの解説欄に踊った。お笑いの専門家の見解ということだった。ただし根拠はSNSに載った視聴者の願望。SNSには反対意見もあったが、それは掲載されていない。

吉本の人間が論評する不自然

 訴訟取り下げから一夜明けた9日、大阪の朝日放送の情報生番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(関西地区などで放送)は吉本に所属するMCの東野幸治(57)が、松本の今後について、「松本人志さんからの発表もあると思うので、我々も静観して」と語った。ここまでは常識的な言葉だった。

 しかし、直後には「個人的にはずっと(松本と)やってきた、というか、お世話になった方でもございます。また共演したいなー、と一方では思う」と付け加えた。

 意見が割れている社会問題について、MCの個人的発言を許した番組側の姿勢が理解できなかった。朝日放送の番組審議委員会は機能しているのだろうか。

 番組の編集権(番組の内容を決め、全責任を負う)は同局にあるのだから、本来は情報番組でMCが個人的発言をすることなどあり得ないのである。まして東野は吉本所属の人間。個人的にも松本と親しく、ステークホルダーなのだから。

「正義のミカタ」での東野発言は松本と吉本にプラスになった面もあるだろうが、マイナス面のほうが大きいと見る。アンフェアな印象を与えた。

 松本の訴訟取り下げから2日後の今月10日、フジテレビ「ワイドナショー」(日曜午前10時)はこの問題を一切取り上げなかった。くしくもMCは同じ東野。しかも吉本が制作にかかわっている。

 この番組が「今話題の芸能ニュースや社会問題に熱い持論を展開!」と謳い、芸能人に関する諸問題を扱っているのは知られている通り。生放送ではないが、収録から放送までそう間が空かないので、松本の問題を盛り込むことは可能だったはず。だが、やらなかった。

 松本は昨年3月までこの番組のレギュラーコメンテーターを務め、中心人物と言えた。だから、松本と吉本に気遣い、触れなかったのかも知れない。

 ただし、放送で取り上げなかったことを批判する声が上がったこともあってか、次の17日の番組では扱った。まず犬飼浩弁護士(63)が「訴えの取り下げは異例」などと解説。田村淳(50)は「松本さんには復帰してほしい」としつつ、事実関係の説明を強く求めた。

 古舘伊知郎氏(69)は「残念に思うのは、取り下げるくらいなら訴えなければよかった」「遊び方を間違えている」と苦言を呈した。この番組ではさすがに東野に語らせなかったが、「遊び方」の中身についても触れなかった。

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