予想外のDeNA「ドラ1」に「独立リーグ」選手の指名増 「ドラフト会議」今だから明かせる“意外な指名”の裏側
10月24日に行われたプロ野球ドラフト会議。支配下で69人、育成で54人の合計123人が指名を受けた。目玉と見られていた金丸夢斗(関西大→中日1位)には4球団、宗山塁(明治大→楽天1位)には5球団の指名が重複し、この2人が今年の主役となったことは間違いない。その一方で、会議前には報道は少なかったにもかかわらず上位指名となった選手がいた。そんな“意外な指名”の裏側を探った。【西尾典文/野球ライター】
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DeNAが即戦力の指名に傾いた理由
まず1位指名で驚きの声が多かったのが、竹田祐(三菱重工West→DeNA1位)だ。履正社、明治大でもエースとして活躍しており、アマチュア球界では有名な投手だが、社会人2年目でドラフト指名解禁となる昨年も候補に上がりながら指名を見送られている。
大学卒3年目の社会人投手では、吉村貢司郎(東芝→2022年ヤクルト1位)が1位指名を受けているが、吉村と比べると圧倒的な結果を残していたわけではなく、上位指名を予想する報道は少なかった。
実際、ドラフト会議当日の1位指名および外れ1位指名で竹田の名前を挙げているスポーツ紙は一つもない。DeNAとしては昨年オフに今永昇太、バウアーという投手の柱2人が退団しており、今年も先発投手のコマ不足に苦しんだこともあって、即戦力が期待できる社会人の指名に踏み切ったと考えられるが、他にも事情があったのではないかと球団関係者は話す。
「やはり大きいのは、高校生の投手が育っていないことではないですかね。チームが長く低迷していたこともあって、大学生の投手を多く上位で指名して立て直しを図ってきましたが、2021年には高校ナンバーワンと言われていた小園健太(市和歌山)を1位で指名しました。球団としても将来のエースとして期待が大きかったと思います。しかし、小園は3年経っても結果を残すことができていません。それ以前で、高校生投手で成功したのは山口俊(2005年高校生ドラフト1位)くらいしかいない。そんな球団としての成功体験の無さが社会人という選択になったのかなと。今年は即戦力として期待できる投手が少なかったので、竹田は2位では残っていない可能性があったというのも理由としてあったと思います」
独立リーグ選手の指名が増加
改めて、DeNAの指名を振り返ってみると、統一ドラフトとなった2008年以降に2位以上の上位で指名された高校生投手は、話に出た小園と2011年の北方悠誠(唐津商)しかおらず、北方も3年で球団を去っている。
球団内では柴田獅子(福岡大大濠→日本ハム1位)や地元の藤田琉生(東海大相模→日本ハム2位)といった将来性のある高校生投手を推す声もあったとのことだが、指名は見送られ、2位でも大学生投手の篠木健太郎(法政大)を指名している。ここにも球団関係者の話す高校生投手の成功例の無さがよく表れていたと言えそうだ。
高い評価を得たという意味で、昨年に続いて話題となったのが、独立リーグの選手たちだ。今年は2位以内の上位指名こそなかったものの、中込陽翔(四国IL徳島→楽天3位)、加藤響(四国IL徳島→DeNA3位)を皮切りに7人もの選手が支配下で指名を受けた。
これは昨年の6人を上回る数字である。昨年、上位指名で入団した大谷輝龍(日本海リーグ富山→ロッテ2位)と椎葉剛(四国IL徳島→阪神2位)が1年目に苦戦していることが“逆風”になるのではないかという声があったが、その予想は完全に外れた。
なぜ、独立リーグの選手を高く評価する球団が多かったのだろうか。その理由の一つとしてある球団のスカウトはデータを重視する傾向が強まっているのではないかと話す。
「高校、大学、社会人と比べて独立リーグは公式戦の数が圧倒的に多い。加えてNPBのファームとの交流戦も多く、そうなるとかなりのデータを収集することができます。データのサンプル数が多ければ、それだけ現在いる選手との比較もしやすくなりますよね。良いか悪いかは別として、そういうデータを重視する考え方が広まってきていることは確かだと思います。逆に、高校生は、どうしても試合数が少ないので判断が難しい。それを補うために独自に調査に動いている球団も出てきていますね」(関東地区担当スカウト)
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