日本のデジタル化を20年早めたのは“コロナ禍”だった インターネットの父・村井純氏は“ネットに強く依存する社会”をどう見ているのか

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 今や我々の生活に欠かせない存在となったSNS。そのメリットの一方で、誹謗中傷は鳴りやまず、虚偽の情報にあふれ、文字通り“カオス”な空間となっていることも否めない。そんな現状を、“日本のインターネットの父”と称され、9月には『インターネット文明』を上梓した村井純氏は、どう見ているのか。我が国のインターネットの礎を築いた本人が語った(村井純/慶應義塾大学教授、デジタル庁顧問)。

(全2回の第1回)

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COVID-19で「20年先の未来」が到来

 インターネットの歴史上、ここ数年で最大の出来事だったのは、間違いなくCOVID-19の大流行でしょう。世界中で自宅から出られない状態が続いたことで、仕事や学校、娯楽まで、すべてがインターネットに強く依存するようになったのです。

 2019年に東京工業大学の「未来社会DESIGN研究センター」が発表した、テクノロジーの未来シナリオによれば、「多くの仕事がオンライン化され、旅をしながら働けるようになる」のは2040年のこと。つまりリモートワークが当たり前になるまでには、あと20年はかかると予測されていたわけですが、これがCOVID-19の到来によって、たった2、3年で現実になってしまったということです。

 たしかに、テレビ電話の技術自体はとっくに存在していました。それこそ何十年も前に「スーパージェッター」で「流星号、応答せよ」なんて言われていたくらいですからね。

 とはいえこれが普及するかどうかは別の話。みんなテレビ電話ができること自体はわかっていたけど、顔が映るのはなんだか恥ずかしいし、仕事で利用するなんて考えもしなかった。

 技術者が良いものを開発しても、その良さを一般の方々が理解して、社会に浸透していくには、相当なハードルがあるんですよね。広めていくことにも、開発と同じくらいのものすごい時間とコストがかかるのです。私自身、誰もがインターネットを利用できる社会をつくろうと尽力してきたわけですが、そこには膨大な労力がかかりましたよ。たとえば電気自動車だって、充電スタンドを整備したり、国として補助金を出したりしながら、少しずつ、少しずつ普及しつつある状況ですよね。

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