「逃げ恥」の脚本家が壮大なスケールで描く社会派ドラマ「海に眠るダイヤモンド」の核心部分

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伝えたいのは戦後の人間史

 現代を代表する脚本家の1人・野木亜紀子氏執筆のTBS「日曜劇場/海に眠るダイヤモンド」(日曜午後9時)が、第3回まで終了した。「日曜劇場」は子供から高齢者まで幅広い視聴者をターゲットにするのが特徴だが、この作品は大人向けで、やや難解な部分もある。それを解き明かしたい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「海に眠るダイヤモンド」は同じ「日曜劇場」の「アンチヒーロー」(春ドラマ)や「ブラックペアン シーズン2」(夏ドラマ)などと比べると、ややとっつきにくい。比喩的表現や暗に伝えるメッセージが多いからである。その分、歯ごたえのある作品を求める大人向けになっており、味わい深い。

 この作品で野木亜紀子氏が描こうとしていることは複数あるが、その中で大きいのは、敗戦国・日本がどうして奇跡の復興を遂げられたか、日本人は何を得て何を失ったか、そして何が変わらないかである。

 その描写には舞台と時代を2つに分けなくてはならないと野木氏は考えた。1955年の長崎県・端島(通称・軍艦島)と2018年の東京である。端島は石炭を掘るために造られた人工島だ。

 日本の繁栄の理由で誰でもすぐに思い浮かぶのは、戦前派や戦中派の人たちが懸命に仕事をしたということ。さらに、この作品を観ていると、大事なことに気付かされる。不当な差別や屈辱に耐えて働いた無数の人たちの存在である。

 端島編の主人公・荒木鉄平(神木隆之介)は炭鉱員の父親・一平(國村隼)に後押しされ、国立の長崎大に進学する。一平は鉄平をエリートにしたかった。

 ところが、鉄平は対等であるはずの学友たちに自分が端島の出身と告げた途端、軽蔑される。鉄平は悔しくて泣いた。家族が住み、生まれ育った故郷を見下されたら、誰だって口惜しい。

 やはり端島から長崎大に進んだ古賀賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)も蔑まれた。どちらも父親は鉱業会社職員である。炭鉱員より島での立場は上だが、本土の人間には関係ない。

 賢将は無念のあまり、「日本の発展を支えてきたのは石炭だ!」と叫ぶ。百合子は「私も言われた。『炭鉱の島の出身なんて、言わないほうがいいよ』って」と声を落とす。2人も涙を堪えられなかった。第1回のエピソードである。

 炭鉱員が不快な思いをさせられたのは端島だけではなかった。全国各地の炭鉱員もそう。多くの人に学歴がなく、真っ黒になって働いたことなどが理由だ。

 江戸時代の思想家・石田梅岩が説いた「職業に貴賤なし」との考え方は、戦後になって広く知られるようになったが、1955年も職業差別は至るところにあった。今もあるのは知られている通り。それでいいのだろうかと野木氏は語り掛けている。

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