期待のドラ1選手がわずか数年で“自由契約”に… 球団関係者は「高卒でプロを目指す選手が減ってしまう恐れも」
選手はよりシビアに判断される時代に
「以前よりも選手の能力を球団側がしっかり把握するようになったことが大きいと思いますね。定期的に筋力や瞬発力などの計測を行うようになっていますし、投手ならボールのスピードや質、野手なら打球速度なども測定して管理しています。練習はもちろん試合のデータもそうですね。球団によってはある一定の水準に達していないと実戦で起用しないこともありますし、一軍昇格などの目安としていることも多い。そうなると、入団から1年、2年経ってもなかなか改善が見られない選手はどうしても整理対象となりやすいですよね。そういう面で選手はシビアに判断される時代になってきているのかなと思います」
ドラフトで選手を指名する際にも、以前と比べて、あらゆるデータを参考にするようになっているという話を聞くが、プロに入ってからもさらに厳しく判断される環境となっていることは間違いないようだ。
しかしその一方でこのように早く見切られる選手が出てくると、大変なのは選手を指名するスカウト活動の現場だという。ある球団のスカウトはこう話す。
「指名する前はどんな順位であっても将来性を評価しているという話を、選手だけでなく指導者や保護者にもします。もちろん厳しい世界だということは伝えますが、1年目からいきなり一軍で活躍できる選手はほとんどいませんから、数年後に勝負という話をしますよね。ただ、ふたを開けてみればわずか2~3年で切られる。育成選手として残ったとしても、支配下に戻れるのは簡単ではありません。そういう選手が多くなると、どうしてもアマチュアの指導者や保護者からは敬遠されるケースも出てきますよね。もちろんプロは結果が全ての世界ですから仕方ない部分もありますけど、プロ入り前だけ甘い言葉を並べて、クビにする時は『はい、さようなら』と思われないようにというのは気をつけています。そういう意味では、今後はより、プロでどのような成長を期待しているとか、どこを伸ばさなければならないかとか、そういう話をしっかりスカウト部で詰める必要があるのかもしれませんね」
戦力外の後、大学でプレーすることは許されていない
アマチュアの指導者からも同様の話を聞くことは多く、プロとアマチュアの関係性の悪化にも繋がりかねない話と言えるだろう。
そうなってくると重要になるのは“選手の受け皿”ではないだろうか。NPBを退団した選手が国内で現役を続行する場合、独立リーグをはじめ、今年新規参入したファーム球団や社会人野球が挙げられる。
ただ、日本学生野球協会が管轄している大学の硬式野球部でプレーすることは不可能となっているのだ。高校を卒業してNPB入りしてすぐに戦力外となった選手が、大学で学び直しながら野球をすることができない……これは大きな損失である。大学側としても高いレベルの野球を経験した選手が加入することで得られるプラスも大きく、このあたりの制度の見直しは議論されるべきだろう。
選手の才能が花開く時期は人それぞれ異なっており、簡単に線を引けるものではないことも確かである。一人でも多くの選手が持っている潜在能力を出し切り、納得いく形で現役生活を終えられるような仕組みが作られていくことを望みたい。
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