フリーアナウンサー・西川あやのが語る、リスナーとの「清い関係」 「ラジオネームが少し輪郭づいた瞬間」
ラジオリスナーとの「清い関係」
2015年から文化放送のアナウンサーとして活躍し、現在はフリーでさまざまな番組のパーソナリティーを務める西川あやのさん。立場上、たくさんの「ラジオネーム」に向き合う中で、その一つ一つに思い入れを持つこともあるそうで……。
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ラジオ局にアナウンサーとして勤めた9年間。自分はいくつのラジオネームに出会ってきただろうか。幾度も同じラジオネームを口にしたし、初投稿のメールについては、出生届を受理する気持ちで大切にその名を紹介した。
出会ってきたラジオネームを振り返ってみると、本名を崩したものや“◯◯くんママ”とか“◯◯だいすき”のような、自分の立場や趣味嗜好を込めた自己紹介タイプが一番多い。中には家計から捻出される毎月の小遣いの額が入っているものもあり、新たなものに出会うたび、奥行きが感じられてうれしい。ことわざや著名人・有名キャラクターの名で遊んでいるものも大変多く、私の統計だとなぜかライオネル・リッチーはもじられやすい。初めてのラジオネームに出会う度、その角度できたか!と人間の発想力に驚嘆する。
そんなラジオネームの奥には人間がいる。しかし、ラジオの喋り手はその人のはっきりとした輪郭を描けない。日常からこぼれるエピソードを何年も共有しているのに、定期的に会う予定があるわけではない。住まいまで知っているのに決してこちらからはアプローチをかけられないところも、なんだか清い関係みたいで趣深いと思う。
当時の発言を改めてこすられ……
以前、午前中の番組を担当していたとき、主婦の方から“サラダをおいしく作れない”という内容のメールが届いた。私はひどく共感して“分かります。自分が食べるためのサラダを作ると自分の手の味になっている気がする”と発言した。その際は共演者の同意を全く得られず、盛り上がらない空気を感じ、すぐに話の方向を変えたと思う。それから5年ほどたったある日、母校の卒業生が集う場で中年の男性と名刺交換をした。私の名前を見て、「あなたの出演していた番組聴いていたよ!」「サラダを自炊すると自分の手の味になると言っていた子だよね?」と……。当時の発言を自分の代名詞みたいに受け止められていて、少々困惑した。自分のささいで愚にもつかない一言を、初対面の、大きな会社の役職にまで就いている人に、改めてこすられている……。
その人は「東京に出てきて一人暮らしを始めたばかりのときを思い出して、すごく気持ちが分かった」と続けた。自分が反省までした発言で、もしかしてノスタルジーまで感じてくださったのだろうか。
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