なぜ「会場限定グッズ」商法をやめられないのか ファンと転売屋の間で板挟みになる“推し活”ビジネスの実態

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会場限定にしたほうが旨味がある

 なぜ、批判が寄せられながらも、運営側は受注販売の形式を取らないのか。結局、会場限定販売にしたほうが、運営側に旨味があるためだ。限定商法を止められない理由はそこにある。運営がその会場でしか買えない限定グッズを作りまくって乱売しているのだから、転売屋が出現するのは当然なのである。

 筆者の知人の芸能マネージャーで、アイドルを担当するT氏は、「会場の空気感だからこそ、人は高揚感を抱き、購買意欲を掻き立てられる」「最初から受注販売やネット販売をしてしまっては、そこまでの売り上げが見込めるとは思えない」と語る。

 近年のライブやコンサートは、グッズ商法に力を入れている。入れすぎている、と表現したほうがいいくらいだが、T氏は、「うちは正直、グッズ販売があってトントンという感じ。アイドルは飽和状態で懐事情はどこも厳しいはずだから、限定販売は止められない」と運営側の苦しさを語る。

 また、すべて受注販売にすべきという意見がある一方で、会場でグッズを買うことも含めてイベントであり、取りやめてほしくないという要望も寄せられるそうだ。「ファンの間からでもいろいろな意見が出るので、どうすればいいのかわからない。結局、トラブルが起こったときに、その都度、対応していくしかない」と、運営側も苦労が絶えないようだ。

売れるかどうか、蓋を開けてみないとわからない

 その一方で、アニメ系のイベントにも関わることが多い大手出版社の編集者は「限定グッズは騒動が起こってはじめて問題視されるものの、売れるかどうかは蓋を開けてみないとわからない」「だから、なんでもかんでも受注販売にするのは現実的ではない」と語り、イベントにおけるグッズ販売の難しさを吐露する。

「私の経験からすれば、すべてのイベントで転売屋が発生しているわけではないし、混乱が起こっているのはごくわずか。むしろ、グッズが売れずに在庫を抱えてしまったパターンは、人気漫画の原画展でも少なくない。現在はコンテンツの消費が早いので、グッズが売れ残るケースのほうが実際は多いと思います。はっきり言って、売れるかどうかは運営側も予測不可能。蓋を開けてみないとわからないのです」

 編集者は、「転売屋対策をしっかりしているかどうかが、ファンのコンテンツに対するイメージを決定づけたりするので、対策は急務」としながらも、過剰に生産すると在庫を抱えるリスクは常にあり、また、転売屋“対策”に割く労力が運営側にとって大きな負担になっていると打ち明ける。クレームが殺到すると、さらに負担が増える。

「かつてはファンサービスだったはずのイベントは、巨大な売り上げを生み出すメインコンテンツになっているので、対策が必要だという意見もわかります。ただ、人材不足もあって対策がとれていないのが現状だと思いますし、同じ悩みを抱えている運営は多いのではないでしょうか」

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