「シャバに出る気はありません」…「ルフィ事件」実行役リーダーが判決翌日、面会で語った言葉 それでも「無期懲役」判決に控訴した理由とは

国内 社会

  • ブックマーク

殴らないと報酬はあげません

 実行役は、フィリピンにいた指示役らとテレグラムを介して綿密に連絡を取り合い、また犯行時もテレグラムの通話状態をオンにしたまま、イヤフォンを装着。リアルタイムで指示を受けながら犯行に及んでいた。さらに指示役は決行直前に、テレグラム通話をスピーカーモードにしたうえ、これから突入する実行役ら全員に<殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません>と伝えることが定番の流れだったようだ。

 さらに「実行役を募るに当たっては、女性や子どもを殴ることができるか、バールで人を殴ることができるかなどが確認された」(判決より)というから、実行役らは少なくとも暴力を振るうことを事前に了承していることがわかる。とはいえ構造的には、実行役らは“指示役に命じられて仕方なくやった”と主張ができる立場にあり、実際そのように怯えながら犯行に手を染めたものもいる可能性はゼロではない。

全ての責任は私にある

 だが永田被告は自身が関与した6つの事件について、全て自らの主体的な犯行の意思があったことを認めていた。

「最終的に決めたのは私です。闇バイトに応募した時点で自分で決めて行動したこと。指示役からの指示の通りに動いたこともありますが、指示を聞いて、自分で判断して、自分でやったこと。全ての責任は私にある」(10月23日公判被告人質問での証言)

 判決でも永田被告に対しては「必ずしも事前に想定したとおりに犯行を行えるわけではない強盗現場において、犯行を成功させるために状況に応じて臨機応変に自らの判断で、ときには指示役の指示に従わずに他の実行役を指揮していた面があったというべきであり、本件一連の事件において被告人が果たした役割は相当大きい」として、各事件の実行役のなかでも責任は重かったと認定している。

面会での言葉

 その永田は、なぜ控訴の道を選んだのか。

 10月23日の被告人質問において永田被告は「被害者に一生謝罪します」と明言していた。「加害者にできることは何もない。でも謝罪をして気持ちが少しでも楽になる人がいるのなら、信じて謝罪をするしかない。僕は、遺族に直接謝罪文を出す行為自体ができないので、まず代理人に出して、そこから始めていこうと思っています」と具体的にその流れも語っている。

 そして「社会には出ません」と社会復帰を考えていないことを語った上で「立川で確定して受刑者になるより、東京拘置所に行った方が、行ける刑務所が増える。自分の行きたい地域がある。その可能性があがるなら……」とも述べていた。「もし直接謝って欲しいと被害者の方に言われた時、面会しやすい距離にしようと思っている」という事情から、移送を希望する地域があり、なるべくそこで受刑生活を送りたいという希望があるようだ。そのためにどのような判決を受けても控訴することはあらかじめ明言していた。そして、のちに控訴を取り下げるつもりであることも明言していた。

「刑に不服はありません。まだ出てないけど。僕はもう、とんでもないことをして被害者の方々の未来を奪った。そんな僕が社会に出ていいのか。刑罰を受けるために刑務所に一生いた方がいい。シャバに出る気はないです。控訴は移送のためだけです」(10月23日公判被告人質問での証言)

 実際に無期懲役が言い渡された直後に永田被告は控訴している。そして翌日、立川拘置所での筆者との面会取材においても「僕はどんな刑を受けても、償う気持ちや行動に変わりはありません」と語った。

 控訴審で永田被告はどのような言葉を残すのか。こちらも注目される。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。