米大統領選マスコミ予想大外れ “セレブの支持が…”はもうやめよ、数学者が思う「本当に反省すべき点」

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「支持球団」とはわけがちがう

 大統領選挙報道に戻ると、筆者の個人的な考えであるが、今回の件では「統計調査では真意が反映された回答になっているか」という基礎的な部分が気になる点となった。統計の「とりかた」の問題である。

 これが「ヤンキースとドジャースどちらを応援するか」という問いであれば、その正確性は相当高いと考える。ところが大統領選のような政治的なテーマとなると支持球団のように素直に回答しにくい。「本当はトランプ支持だがそれをいいにくい」層が一定数いたことが予想できる。

 統計の「とりかた」に問題があると、数学的な「統計」の観点からは手も足もでないというのが正直なところだ。今回の大統領選の結果を踏まえ、今後米国では有権者の意識を踏まえた学術的な行動研究がより注目されると思う。

 誰彼が支持しているからという「好き嫌い」に偏った分析、そして「とりかた」に問題があることに気づかないまま「統計」に基づいた予測が、大外れとなったわけであろう。筆者としては「統計に関する報道なんかは、所詮、当たるも八卦当たらぬも八卦だよ」という冷めた意見が広がることを恐れるのである。

 近年は20世紀の頃と違って、学校教育でも「統計教育」が盛んになり、さらに大学ではいわゆる「データサイエンス」の学びが盛んになってきた。「なぜ事前予測が大きく外れたのか」を扱わず、「なぜトランプが勝ったのか」といった点だけで結果を分析しようとするマスコミの大統領選挙報道が、このような流れに水を差すことになり兼ねないことを危惧する。統計や数字が信じられる世になることを祈る次第である。

芳沢光雄(よしざわ・みつお)
1953年東京生まれ。東京理科大学理学部(理学研究科)教授を経て、桜美林大学リベラルアーツ学群教授に就任、2023年に定年退職。理学博士。専門は数学・数学教育。近著に『昔は解けたのに…大人のための算数力講義』(講談社+α新書)ほか著書多数。

デイリー新潮編集部

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