米大統領選マスコミ予想大外れ “セレブの支持が…”はもうやめよ、数学者が思う「本当に反省すべき点」

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 激戦の予想から一転、ドナルド・トランプ氏はあっさりとカマラ・ハリス氏に勝利し、第47代米国大統領に選出された。メディアが喧伝していた“見立て”は外れた格好だ。こうした現状に、東京理科大学理学部(理学研究科)教授、桜美林大学リベラルアーツ学群教授を歴任した桜美林大学名誉教授の芳沢光雄氏は危惧を覚えているという――。

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 今回のアメリカ大統領選挙に関して、事前のマスコミ予想では「まれに見る大接戦」と報じていた。しかし、終わってみれば獲得選挙人数がトランプ氏312人、ハリス氏226人で、「まれに見る大外れ」の選挙となった。

 最近、ハリス氏の敗因について「有名人の支持表明が逆にマイナスになったのではなかったか」などの「結果論的思考」でいろいろ語られているが、そのような議論はアメリカの政界関係者に任せておいて、メディアがすべきは、まず、なぜ予測が大きく外れたのかを議論すべきことであろう。事前の統計調査とその結果の公表に目を向けて分析しない限り、「統計」そのものに対する信頼は大きく損なわれるだろう。とくに日本でのマスコミ報道は、「好き嫌い」と「統計データ」をごちゃごちゃにして扱っていたように感じる。

 もっとも、暗号資産(仮想通貨)に関しての動きを見ると、選挙開票前から上昇傾向があったので、市場の見通しは確かだったのかも知れない。実は8月23日にも、そのように感じたことがあった。その日にロバート・ケネディ・ジュニア氏は、選挙活動を中止しトランプ氏を支持することを表明した。そのときも、表明を受けて24時間で暗号資産は約5%上昇した。もちろん、ケネディ氏もトランプ氏も暗号資産には友好的な姿勢を示してきたからである。

 現在、あらゆる分野で「統計」は用いられている。確率分布を用いた「有意な差」があるか否かだけでなく、線形代数学の「固有値」を用いた「多変量解析」なども盛んである。他にも、死亡などの稀に起こる現象を考える「ポアソン分布」や、格差の問題を視覚的にも捉えることができる「ジニ係数」など、個別の課題に対してもいろいろな道具が準備されている。それらについて筆者は、何冊かの拙著で丁寧に説明してきたが、昔から統計に興味があったからではない。

 きっかけは80年代にアメリカのオハイオ州立大学に滞在しているとき、「統計学部」という学部があって驚かされたことだった。オハイオ州はアメリカの中心的な州という面もあって、統計調査が盛んであったことも影響していたのだろう。

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