「人民日報」社説はまるでトランプの“ご機嫌取り”…「関税60%」男の当選で戦々恐々とする「習近平」 台湾封鎖なら関税は「200%」の恐怖

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着々と進める軍事作戦

 今年10月中旬、中国軍は台湾本島沖合の6カ所を拠点として、台湾全島を取り囲み、大規模な軍事演習「連合利剣―2024B」を実施した。戦闘機や戦艦、潜水艦なども出動するなど、経済封鎖をちらつかせた。中国軍が今年5月に実施した前回演習は末尾が「A」だったため、今後、「C」を実施する可能性も取りざたされており、中国は着々と台湾への軍事作戦の準備を進めているようだ。

 フランケッティ氏は、中国軍の戦力を分析し、中国軍を壊滅させるための「プロジェクト33」という対中軍事作戦計画を策定した。「33」は同氏が第33代目の作戦部長であることから、作戦名に入れられたという。その根幹は人工知能(AI)やドローンなどの無人システムを最大限活用しつつ、軍艦や潜水艦、戦闘機および、全兵員の80%を常時戦闘に投入できる能力を持つという2段階仕立てとなっている。

 仮に、バーンズCIA長官らが指摘する2027年8月1日前後に、習近平氏が台湾侵攻軍事作戦を断行するとすれば、トランプ氏も大統領任期中(2025年1月20日~2029年1月20日)だけに、何からの対応をとらなければならなくなる。

私がクレイジーであることを知っている

 このため、米メディアも中国軍の台湾への軍事侵攻作戦に大きな関心を抱いており、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は今年10月、トランプ氏との単独インタビューで、「中国による台湾封鎖に対抗するために軍事力を行使するかどうか」と質問した。

 トランプ氏は「私は彼(=習近平)と非常に強い関係を築いていた」と述べたうえで、「彼は私を尊敬しており、私が著しくクレイジーであることも知っているので、私が(軍事力を使う)必要はないだろう」との見方を示している。そのうえで、トランプ氏は「もし、あなた(習近平氏)が台湾に侵攻するなら、申し訳ないが、150~200%の関税を課すつもりだと言うだろう」とも語り、中国が台湾に軍事侵攻したした場合、「150~200%の関税を課す」ことを明らかにした。

 その一方で、トランプ氏は今年6月末にフロリダで行われたブルームバーグ・ビジネスウィークのインタビューで、台湾防衛について、台湾が「アメリカのチップを100%盗んだ」と不満を漏らし、台湾が米国に「防衛費」を支払うことを望んでいるという見解も示した。

 いずれにしても、これらのトランプ氏の発言から、いまのところ、トランプ氏自身は台湾をめぐって中国と戦火を交えることは考えておらず、関税などの経済的な政策で中国に報復する構えだ。それにしても、中国への「200%関税」は極めて非現実的だが、「トランプ氏ならばやりかねない」とも思ってしまうところに、トランプ氏への怖さがある。

 それだけに、習近平氏としても、トランプ氏に送った祝電で披露したように、「安定的で、健全、持続可能な発展の米中関係」の実現のために、2027年8月1日の中国人民解放軍建軍100周年を期した台湾侵攻軍事作戦を先延ばしする選択肢をとる可能性も捨てきれないのではないか。

 いずれにせよ、トランプ当選が中国の台湾政策に大きな影響を与えることは間違いない。

相馬勝(そうま・まさる)
1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。

デイリー新潮編集部

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