ゴジラ新作で「山崎貴監督」続投が決定! 大ヒット「-1.0」のアカデミー賞獲得に「メイキング映像がひと役買った」とされる理由
テレビ放送でも高視聴率
今年3月の「第96回アカデミー賞」で邦画・アジア映画史上初となる視覚効果賞を受賞した山崎貴監督(60)の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が11月1日、地上波で初放送され(日本テレビ系「金曜ロードショー」)、平均世帯視聴率10.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を叩き出した。
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このところ、なかなか2ケタに届くことのなかった同枠だが、ネット上では《初めて見たけど想像以上にVFXが凄かった。さすがにアカデミー賞を獲っただけのことはあるなと思った》《山崎版は過去に遡ったところが異色でした。ゴジラの姿や戦後日本の情景を描写するVFXも見事》などと称賛の声が目立った。放送終了後には《製作決定》《監督・脚本・VFX 山崎貴》《続報を待て》とのサプライズ告知があったが、
「歴代アカデミー賞で、監督として視覚効果賞を受賞したのは『2001年宇宙の旅』(1968年)のスタンリー・キューブリックのみ。山崎監督はキューブリック以来55年ぶり、史上2人目の受賞監督という快挙を達成しました。これまでの『ゴジラ』シリーズで、2作以上を監督した人はいますが、世界から注目を浴びたうえで、2作連続監督を務めるのは山崎監督が初めて。プレッシャーもあるでしょうが、ファンの期待に応えてくれるはずです」(映画担当記者)
「-1.0」は「ゴジラ」シリーズ70周年記念作品で、日本製作の実写としては30作目。1954年に「ゴジラ」の第1作が公開され、「ゴジラ」の“誕生日”とされる昨年11月3日に公開された。
製作には、山崎監督が所属する映像制作会社「白組」のVFX(視覚効果)のスペシャリストが集結。ストーリーは太平洋戦争中にゴジラが出現、さらに戦後まもなく焼け野原となった日本に再び現れる。戦争の惨禍を生き抜いた人々にゴジラが襲い掛かり、神木隆之介(31)演じる主人公らが、新たな“災厄”にどう対峙するかが描かれた。興行収入は76.5億円を記録し、国内の映画賞を総なめにしていた。
ハリウッドでは考えられない低予算
新作の製作発表から2日後の11月3日、山崎監督は、都内で行われた「ゴジラ」ファンが集う「ゴジラ・フェス」内のイベント「居酒屋ゴジラ」に登場した。イベントの司会を務めたのは、映画通として知られる元フジテレビでフリーの笠井信輔アナ(61)。さっそく、新作について興味津々の笠井アナから聞かれた山崎監督は、「今日、何を言いに来たかというと、『これ以上、発表できない』と言いに来ました」と、次回作については何も語らず。その代わり、「-1.0」について振り返った。
この1年を「濃くて長かった」と振り返った山崎監督だが、ほかの作品のオファーについて、「スゴイやついっぱいありました。言えない。ゴジラの映画撮るため、血の涙を流しながら断った」と苦笑した。
「米アカデミー賞で、山崎監督が最大級の評価を受けた要因の一つが低予算であったことです。製作費が15億円という、かなりの低予算にもかかわらず、驚くほどのクオリティー。視覚効果賞の歴代受賞作には、製作費が現在の日本円換算で約346.5億円の『TENET テネット』、約616億円と言われる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』など、ハリウッドの超大作ばかり。ハリウッドの製作陣にすると、低予算であそこまでの出来映えは信じられなかったそうです」(映画業界関係者)
「-1.0」は、海上でのシーンが多く、クライマックスでは、当時の日本の科学者らが集まって英知を結集。現有の兵器を投入しての「海神作戦(わだつみさくせん)」でゴジラを殲滅し海底に沈める。山崎監督はキャスト、スタッフともども船酔いに苦しみながら海上でロケをこなしたことも明かしたが、その詳細は、米・アカデミー賞にノミネートされた際に事務局に提出した、6分あまりのメイキング映像がイベント会場で流され、明らかになった。
「国内の映画賞では、ノミネートする作品について良く知れ渡っているので、このような映像の提出を求めることはありません。しかし、米アカデミーでは、特に視覚効果賞でなおかつ海外の作品とあれば、どんな仕事ぶりだったのかを知るために、提出を求めるそうです。メイキング映像が受賞にひと役買うことになったはずです」(同)
メイキング映像によると、製作に関わったメンバーは35人、ショット数は610カット、製作期間は約8カ月だった。映像でも《これは、『ゴジラ-1.0』のような作品を作るにはかなり少ない人数と時間だと思います》と紹介されている少ない人員を最大限に生かすため、各工程チェックのプロセスをシンプルにすることが最優先された。山崎監督がVFXスーパーバイザーも兼任していたため、作業するアーティストと直接、対話。大半のスタッフを同じフロアに集め、ショットが出来上がるとすぐに監督がチェックするという工程を繰り返した。キャスター付きのイスで各スタッフのもとをせわしなく動き回る山崎監督の映像が流れたが、《そのため、無駄な待ち時間がなくなり、トライ&エラーの回数を飛躍的に増やすことができました》という。
潤沢ではない予算はセットの製作にも影響した。劇中には多くの軍艦が登場したが、すべてのセットを作るのは不可能。用意できたのはわずか1つの船べりだけで、それを基にまず、1艇の映像を完成させ、その1艇をデジタル技術を駆使して、さまざまな軍艦バージョンの映像に変え、複数の軍艦を作り上げ、まるで大船団のような映像に仕上げたという。また、当時の銀座の再現も困難を極め、広大な駐車場にわずかなセットを最低限作り上げ、足りない部分はCGで補足した。
さらに、ゴジラはできるだけカメラに近づけることで巨大感とおそろしさを観客に体感してもらうのが目標。そのため、どこに近づいても大丈夫なようにすさまじい情報量を盛り込んだというのだ。山崎監督は、《古典的な手法がデジタルと組み合わせることで可能性を広げること。そこには、手作りの温かさが自然と備わっていたと思います》と説明を終えた。
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