「破滅的消費」で憂さ晴らし、経済事情で「即同棲」…アメリカ経済を苦境に陥れる“若者たちの抑圧”
恋愛事情の変化が少子化傾向に
しわ寄せを最も受けている若者たちは、行動パターンに変化が生じている。
たとえば家賃を節約するため、付き合い始めてすぐに同棲する例が増えている。同棲した若者の8割が、決め手は「経済的理由」と回答しているものの、多くは経済的な理由で同棲したことを後悔しており、今後の恋愛についても消極的になっているという。(9月19日付クーリエ・ジャポン)
日本ではあまり認識されていないが、米国でも少子化が進んでいる。
米疾病対策センター(CDC)の発表によれば、2023年の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に出産する子供の数)は1.62と過去最低だった。米国の出生率は1971年から下がり始め、2007年以降は一貫して置換率(現在の人口が均衡した状態を保つための出生率)である2.1を下回っている。
昨年の出生数も360万人弱で、約340万人だった1979年以来の低い水準だ。住宅費の高騰が災いして若者たちが恋愛に消極的になれば、米国の少子化はますます進んでしまうのではないだろうか。
「破滅的消費」に走る若者たち
米国経済を牽引する若者の消費にも暗い影が忍び寄っている。
11月1日付ブルームバーグは、米国の若者は深刻な債務危機に直面していると報じた。若者たちは社会に出た直後に新型コロナのパンデミックと数十年ぶりの高インフレという厄介なワンツーパンチを食らったからだ。
ニューヨーク連銀によれば、18~29歳の若年層は現在、合計1兆1200億ドル(約170兆円)の負債を抱えている。Z世代(1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代)のクレジットカード利用者の7人に1人が限度額に達している。
米国の消費者債務総額(17兆8000億ドル)の6%強に過ぎないが、「こうした負債が若者の間で広がる経済への悲観論を助長するのではないか」との懸念が生まれている。
気になるのは、若者の間で「破滅的消費」という現象が広がっていることだ。懐事情が厳しくなれば消費を控えるのが通常だが、経済的不確実性を理由に散財している若者が4分の1以上存在している(米個人情報調査企業「クレジット・カルマ」調べ)。
筆者はこの非理性的な行動について、若者たちのメンタルヘルスの悪化が関係しているのではないかと考えている。
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