皇位継承に干渉する国連の「決定的な誤り」とは 「保守派の英語による発信力は脆弱過ぎる」

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日本外交の貧弱さ

 渡瀬氏が続ける。

「リベラル系の人々は英語での対外発信を得意として積極的な一方で、日本の保守派の英語による発信力は脆弱のひと言。国際機関にとって英語でない訴えは、存在しないのと同じです。つまりリベラルな人々の声が“日本の声”として国連側に認識された可能性は否定できません」

 実は安倍政権だった2016年の審査時にも、皇室典範の改正を求める勧告案が取り沙汰されたが、この時は日本政府の強い抗議によって記述が削除された経緯がある。

「今回の一件は、日本外交の貧弱さを象徴するものです。外交的には勧告を出された時点で負け。そうなる前に日本側の主張の正当性を相手に納得させる交渉スキルの獲得が、課題として浮上しています」(同)

8人の女性天皇

 そんな中、今回の勧告に反駁(はんばく)するのは京都産業大学名誉教授の所功氏だ。

「そもそも皇室典範を一般的な人権問題と同列で考えるのが誤りで、『王制』や『身分』に関わる国柄の問題として捉えるべきです。皇室典範が明治以降、皇位継承を男系男子に限ったのは、当時の時代状況も大きく影響していました」

 所氏によれば、明治時代、皇族男子が軍に属し、天皇陛下が軍の統帥権を有することになったため、皇位継承者を「男子に限る」ということになったそうだ。

「皇室の長い歴史において、これまで8人の女性天皇が即位している。男子を優先した面はあるものの、決して女性を排除してきたわけではありません。日本の歴史や慣習、文化などに鑑みることなく、男女平等という観点のみから皇室典範を論じることがいかに見当違いか。皇室のあり方は、日本が独自に考えるべき問題です」(同)

週刊新潮 2024年11月14日号掲載

ワイド特集「ケセラセラ」より

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