「世界の黒澤」のオファーを断って…盟友監督が証言していた「高倉健」映画さながらのダンディズム

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お世話になった人にお酒を

 最後に健さんと降旗監督の普段の付き合いについて触れてみたい。

 健さんが毎日、理髪店に通うことはよく知られている。確か店主がテレビに出て、そのことを話したのを見た記憶がある。

 その理髪店があるのは、健さんの家と降旗監督の家の途中だという。健さんは理髪店に出かける前に「これからお酒を持って行くから」と電話してから寄ってくれる。健さんはコーヒー党でアルコールを口にしない。それがいただいたものかは不明だが、世話になっている人にお酒をあげることが多かったようだ。

 健さんと監督の最後の作品「あなたへ」が公開された2012年暮れのこと。監督が一人で家にいたら、勝手口から声が聞こえてきた。宅配便かと思って出て行ったら、お酒を持った健さんが立っていた。

「いろいろ代理で賞を受け取ってくれてお疲れ様です」

 と挨拶して帰っていったという。

 高倉健にはこんないい話がたくさん転がっている、不世出ともいうべき俳優だった。

峯田 淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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