元風俗嬢の妻に「風俗通い」がバレた… その“思い当たるふし”に44歳夫に芽生えた猜疑心

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【前後編の後編/前編を読む】妻は風俗嬢、夫は医師 異母兄弟たちと育った僕が彼女に惹かれた「なれそめ」

 有賀誠太郎さん(44歳・仮名=以下同)は、“自由人”の父のもと、異母兄弟たちと育った。父と同じ勤務医の道を歩んだ彼が35歳の時に結婚した相手は、9歳下の春那さん。風俗に勤めていた彼女の客が誠太郎さんだった。一度は医学部に進学するも、医師になるのを強いる父への反発から働き始めた彼女は「私、家庭向きじゃないから」と語る風変わりな女性だった。

 ***

 結婚を機に、誠太郎さんは中古マンションを購入した。医師の年収は、多忙なわりに世間が思っているほど高いわけではなかったが、定年までにはなんとかローンを返せる目処もついた。越してきた春那さんは、1週間近く寝込んだという。

「具合が悪いのかと心配したんですが、そうではないけど、とにかく起きていられないと眠り続けていました。おそらく長年の疲労がたまっていたんでしょう。ようやく起きていられるようになった彼女は、なんとなく前と様子が違っていました」

 私、ちゃんとした妻になるねと春那さんは言った。風俗も辞めた。 別にちゃんとした妻になどならなくていい、春那は春那のままでいいんだからと誠太郎さんは言ったが、春那さんはせっせと家事にいそしんだ。別に家事をやってもらいたくて結婚したわけじゃない。自由に暮らす春那さんと一緒にいたかっただけなのだ。

「そのあたりがわかりあえないのはつらかったですね。春那は急に『待つ妻』になってしまった。たぶん彼女、もともとは生真面目な性格なんでしょう。結婚という制度に乗っかったことによって、生来の几帳面さが戻ってきたのかもしれない。出会ったころの奔放さはなくなって、すんなり従来の妻像にあてはまっていきました」

離婚したほうが彼女のため?

 風俗に勤めていたころの彼女のほうが、むしろ無理して作っていたのだろう。人を見抜くのはなかなかむずかしい。

「だからたぶん、妻は風俗に勤めていたことが他人に知られたらどうしようと思っていたかもしれません。あまり家から出ることもなくなっていった。自由な彼女が本来だと思い込んでいた僕は、彼女をどんどん外に出そうとしていて、彼女はそれに抗うようにこもっていって。完全に気持ちがすれ違っていきました」

 求めているものが違うのだから、離婚したほうが彼女のためかもしれないと誠太郎さんは思うようになった。だがそれを切り出そうとしたとき、春那さんが妊娠していることがわかった。結婚して8ヶ月ほどたったころだった。

「ここが最後の話し合いだと思い、どうすると尋ねました。僕はきみが望む生活をすればいいと思うし、きみには自分の幸せを追求する権利がある。子どもを産みたくないならそれもいいし、離婚したいなら応じる。きみがつらそうに生きているのを見るのは嫌なんだと誠心誠意、伝えました。彼女は、2、3日考えると言い、『子どもは産む。あなたと一緒に家庭を築きたい』と言ってくれた。それならそれを歓迎するけど、無理はしないこと、嫌なことは嫌だと言うことを約束してもらいました。僕はきみが笑って過ごしてくれればそれでいいんだからとも言いました」

 のちに春那さんは、自分が役割を期待されていると思うと過剰に反応する傾向があると誠太郎さんに打ち明けたそうだ。医師になることを期待されたから猛勉強をして医学部に入った。風俗の世界にいたときも、人が自分に期待している「気っ風のいい、さばけたおねえさん」像を完璧に演じていた。だから、本当の自分がわからなくなったと春那さんは泣き笑いしていたという。だが、それを告白したことで、春那さんはかなり楽になったようだった。

「人の期待に応えることはときとして大事かもしれないけど、それが目的になったら生きるのは苦しいでしょうね。とはいえ、僕も若干、そういう面があるから春那の気持ちはよくわかりました」

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