妻は風俗嬢、夫は医師 異母兄弟たちと育った僕が彼女に惹かれた「なれそめ」

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「後腐れなく疑似恋愛」

 誠太郎さん自身は都内の私大医学部を卒業、医局に入局してから、他の病院を転々とし、大学病院に身を置いた。結婚相手とは他の病院に勤務していた32歳のころに出会った。

「僕はそれほどエリートでもないし、出世したかったわけでもない。医師として患者さんと向き合って一緒に病気を治したい。それだけでした。ただ、患者さんに向き合うあまり、ひとりの診察時間が長すぎると病院側から文句を言われたこともありました。ストレスといえばストレスなのかな。それを発散させるためによく風俗に出かけましたね。先輩に連れていかれたのが最初でしたが、そこからけっこうはまって。言い方は悪いけど、後腐れなく疑似恋愛を楽しめるのがいいなと思ったんです」

 恋愛そのものをするには時間的にも精神的にも余裕がなかった。ひとりで性欲処理をするのは虚しい。お金を払って疑似恋愛ができれば、それがいちばんありがたかった。

「いくつかのお店にお気に入りの子がいました。みんないい子でしたよ。僕は自分の職業を明かさなかったけど、1人、医師でしょと見抜いた子がいるんです。どうしてわかったのと聞いたら、なんとなくってはぐらかされたけど」

医師の家に生まれた彼女

 結局、見抜いた彼女である春那さんと、彼は35歳のときに結婚した。春那さんは26歳だった。デートを重ねているうちに、彼女が医学部中退だと知り、急に彼女への興味が深まったのだという。

「彼女の父親も医師で、小さいころから英才教育を受けていたんですって。でも彼女は医師ではなく、ダンサーになりたかった。両親はそんな彼女の意志を完全に無視した。そこで医学部には入ったものの、3年生になる時点であっさり中退してしまった。親は激怒、彼女はそんな親への反発から風俗に入ったそうです。『もう風俗にも飽きたから、そろそろ留学しようと思ってる。MBAをとろうかと思って』と軽く言うんですよ。相当、頭脳には自信があったみたい。なんだかおもしろくて、留学してもいいし日本の大学に入ってもいいけど、オレと結婚しないかと持ちかけてみました。彼女は『私、家庭向きじゃないから』と言っていましたが、好きなように生きていいからと説得して……。彼女の風変わりな雰囲気に惹かれたんです。彼女は、じゃあ、結婚でもしてみるかという感じでした」

 東京にいた弟と妹には紹介した。ふたりとも「おもしろいねえさんだね」とすっかり気に入ったようだった。両親には結婚することだけ報告した。いつか連れていくからと言うと、楽しみにしていると母が言った。

 ***

 よそとは違う環境で育ち、珍しい出会いによって結婚した誠太郎さん。【後編】では春那さんとの家庭に起きた“事件”を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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