妻は風俗嬢、夫は医師 異母兄弟たちと育った僕が彼女に惹かれた「なれそめ」

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【前後編の前編/後編を読む】元風俗嬢の妻に「風俗通い」がバレた… その“思い当たるふし”に44歳夫に芽生えた猜疑心

 男女問わず、職場においても、また家庭においても「役割」が求められる。それを特に構えることもなくうまくこなせる人もいれば、ストレスがたまっていく人もいるだろう。

「僕は苦手なんですよね。職場ではいい人だと思われるようにがんばっているし、家庭ではよき夫、優しいパパを目指している。でも、それだけじゃないでしょ、人間って。どこかで自分を解放しなければやっていけないんですよ。それを責められても、申し開きのしようもない。女性も同じようにストレス解消しながら生きているんじゃないでしょうか」

 夫婦関係がうまくいかなくなっていると嘆くのは、有賀誠太郎さん(44歳・仮名=以下同)だ。落ち着いた声が魅力的な男性である。彼は、中部地方のとある県庁所在地の出身で、勤務医だった父と看護師だった母の間に生まれたひとり息子だ。本人も、東京の私立大学病院の勤務医となった。

「父も忙しかったとは思うんですが、子どものころの記憶では、母のほうが忙しく働いていたような気がします。夜勤もありましたしね。父の実家の敷地に離れを作って、僕らはそこに住んでいたから、母が夜勤のときは母屋で祖母と一緒に寝ていました」

「おかあさんには内緒だぞ」

 父には無条件にかわいがられたが、母は厳しかったと彼は言う。父が40歳、母が38歳のときの子だから、父は目に入れても痛くないほどかわいかったのだろうし、母はそんな夫を見て自分なりの躾をほどこしたのではないだろうか。ただ、両親は決して仲がいいとは言えなかったそうだ。

「父は自分が休みで母のいないとき、僕をよく連れて歩きました。当時はわかっていなかったけど、自分のつきあっている女性のところへ行っていたんです。たぶん、2、3人いたと思う。行くとごちそうを食べさせてもらった。ある家には女の子がいて、食事のあとはその子と一緒に近所の原っぱで遊んでおいでと言われる。別の家にはお手伝いさんみたいな人がいて、連れ出されて近くの喫茶店でパフェを食べさせてもらったりした。オヤジは帰りにいつも、『おかあさんには内緒だぞ』と小遣いをくれました。小学校2、3年生になるまで続きましたね」

 彼が小学校中学年になったころ、母が仕事を辞めた。どうやら夫の浮気に気づき、苦悩のあまり体調を崩したかららしい。だからといって両親が仲よくなったわけでもなく、なんとなく常に不穏な緊張感が、家庭内には漂っていた。

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