今秋、MC番組が2本スタート「東野幸治」はなぜ、衰え知らずなのか トップクラスの「MC力」とサブカルにも精通の「ふり幅」

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不思議な存在

 2人とも芸人MCとしてはトップクラスの腕を持っている。どちらも番組を進める技術に優れているだけではなく、笑いに振り切ったときの爆発力もある。番組の性質やその場の空気に合わせて笑いの濃度を使い分けることができる。

 今田と東野は似ている部分もあるが、得意分野やプレースタイルはそれぞれ微妙に異なる。音楽にたとえるなら、今田はメジャーコードで、東野はマイナーコード。「M-1グランプリ」のような華やかな場所には今田の安定感のある仕切りがぴったりだが、東野は深夜番組やマニアックなお笑い番組にもよく馴染む。

 東野は興味の幅が広く、多趣味でサブカルチャーにも精通している。ゴールデンの番組でMCを務めたり、「ワイドナショー」で時事問題を扱ったりする一方で、サブカル系のトークライブにひょこっと顔を出したり、自身のYouTubeチャンネルではマイナーな芸人や不祥事芸人をゲストに招いたりするなど、独自の動きを見せている。

 普通のタレントであれば、出世の階段を上っていくにつれて、自分の中のサブカル的な要素を徐々に薄めていくものだ。だが、すべてをフラットに捉える東野にはメジャーとマイナーを区別する感覚がない。だからこそ、当たり前のようにどんな場所にも馴染むことができる。

 すべてを楽しみながら、すべてのものと一定の距離を置いているようなところもある不思議な存在。東野は、こだわりがないことをこだわりとして生き抜くお笑い界のオールラウンダーなのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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