「病院が廃業を余儀なくされたケースも」「薬剤師にとって大問題」 マイナ保険証に医療業界からクレームの声が続出
「マイナ保険証でトラブル」は7割
現行の健康保険証は、12月2日をもって新規発行が停止される。それに取って代わるのが、他ならぬいわくつきの「マイナ保険証」である。医療の現場では不具合が相次ぎ、さらには利用者が「解除」しようにも一筋縄ではいかないというのだから、あきれるほかない。【前後編の後編】
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前編【マイナ保険証を解除させないために手続きを煩雑化? 自治体も「もう少しはっきりしてほしい」と苦言】では、マイナ保険証の利用登録解除の手続きが煩雑であり、さらに自治体への連絡もずさんなことからくる混乱などについて報じた。
言うまでもなく、現行保険証の「廃止」が近づいたからといってマイナ保険証の不具合が解消されるわけではない。全国保険医団体連合会(保団連)の副会長である大阪府守口市「北原医院」の井上美佐院長が言う。
「保団連が10月に結果を発表した調査では、1万件あまりの医療機関のうち、今年5月以降に『マイナ保険証のトラブル』があったと回答したのは7割に上りました。これは昨年10月~今年1月分の調査と比べて約10%増えています」
中でも多かったのは、
「名前や住所などの情報が『●』という表記になってしまう、あるいはカードリーダーがうまく読み込まないといったケースです。また政府が改善するとしてきた『誤ひも付け』も189件ありました。他にも1割自己負担の人が3割課されたり、なぜか保険の資格取得日が未来の日付になってしまったり、といった事例が見られました」(同)
「読み取り機から取り忘れるトラブルが頻発」
千葉市にある「ドクターケンクリニック」の中村健一院長も、こう明かす。
「うちの患者さんでマイナ保険証を使う方は2割弱です。現行の保険証は受付での提示後、手渡しで戻すので忘れることはありませんが、お年寄りなどが『ここに置いたんだけどな』と、マイナ保険証を読み取り機から取り忘れるトラブルが頻発しています。警告音が鳴るわけでもなく、次の人が間違って持って行ってしまう恐れもあります。またお子さんのいたずらを防ぐため、読み取り機を高い場所に設置している医療機関が多いのですが、これでは車椅子の人が届かず、顔認証にも不自由が生じています」
デメリットを被っているのは医師だけではない。「桜台薬局」を経営する、東京都薬剤師会の永田泰造・前会長が言うには、
「マイナ保険証では、患者さんが服用している薬の最新の情報は得られません。その理由は、オンライン資格確認のシステムで得られる情報が、単に保険(調剤報酬)請求で確定したレセプト情報に過ぎず、1カ月程度古くなってしまうためです」
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