中日・井上新監督は一見地味そうだけど…実は「伝説のプレー」の帝王 抗議電話が殺到した巨人戦の“誤審騒動試合”で見せた執念のバックホームとは

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落合監督も笑いをこらえきれなかった“珍プレー”

 今度は珍プレーを紹介する。落合監督を爆笑させる“伝説の珍走塁”が見られたのが、2005年5月1日の横浜戦である。

 6回にアレックスの3ランで3点を追加した中日は、代打・井上も右翼線にタイムリー二塁打を放ち、14対2と大きくリードを広げた。だが、次打者・荒木雅博の中前安打で本塁を突こうとした井上は、三本間でまさかの転倒。慌てて四つん這いになって三塁に戻り、かろうじてセーフになった。

 ベンチの誰もが大笑いしたこのシーン。落合監督も初めは帽子で顔を隠し、笑いをこらえようとしたが、直後、「もうヤケだ」とばかりに帽子の“覆い”を外し、「ワッハッハ!」と呵々大笑する姿がテレビ画面に大映しになった。

「思わず足がよろけた」と大いに恥じ入った井上だったが、井端弘和の遊ゴロの間に15点目のホームを踏み、「得点できて良かったよ」と安堵の表情を浮かべた。

 2007年9月24日、巨人との首位攻防戦では、“伝説の落球”を演じている。この日休養した中村紀洋の代役で3番レフトとして16日ぶりに先発出場した井上は、2対0とリードの2回、先頭打者イ・スンヨプが高々と打ち上げた左飛を捕球する際に、人工芝に足を取られて、スッテンコロリン!と前のめりに転倒。まさかのアクシデントに、アウトを確信していたマウンドの山井大介も思わず唖然とした。記録は三塁打となり、二岡智宏の二ゴロで1点差に迫られてしまう。

 だが、中日は取られたら取り返す理想的な攻撃で7対5と逃げ切り、ゲーム差なしで首位浮上。もし負けていたら“戦犯”になるところだった井上も「チームメイトに助けられました」と苦笑いだった。2回の珍プレーは、打球に触れていないのに、誰が呼んだか、“伝説の落球”として語り継がれることになった。

 来季は3年連続の最下位に沈んだ中日を躍進させる“伝説の采配”を期待したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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