金のためなら老婆を殺す「ルフィ強盗団」から家族をどう守るか…伝説の元“泥棒刑事”が明かす「闇バイト凶悪集団」が“最も恐れるもの”とは

国内 社会

  • ブックマーク

金のありかを聞かれたら

 こうした対策を取っていても強盗と鉢合わせした場合は、必ず金のありかを聞かれることになる。その場合に備え、家に置いておく現金はなるべく少なく、また分散させておきたい。例えば家に50万円があるとするならば、20万、20万、10万円など、複数に分けておく。「強盗に入られた時、そのうちのひとつを出して『これしかない』と20万円の場所を教え財布を渡す。身の危険が迫っていますから、自らお金を渡すくらいでなければなりません」という。

 そして広域強盗らは家人に金のありかを聞くだけでなく、家人に金庫を開けさせようともする。事前に指示役から与えられた情報の中に、金庫の場所も含まれていることがあるのだ。「一般の家にはほとんど置いていない」という金庫の情報まで指示役が入手している背景には“闇名簿”の存在があると小川氏は指摘する。「高齢者の名簿を元に、闇バイトを使ってリフォームやリサイクルなどの名目で訪問させ、状況を調べさせた上でアップグレードした特殊な名簿」だという闇名簿を元に、指示役がターゲットを決めることがあるという。

「開かない金庫といえば『クマヒラ金庫』(金庫メーカー国内最大手・クマヒラ社制作の金庫)です。金庫破りのプロが侵入した家でクマヒラ金庫に出会った時、最敬礼してそのまま触らずに出て行ったという話もあります。しかし強盗の場合はそもそも金庫が家にあることで『お前が開けろ』と言われますよね。手が震えて開けられないと、犯人から『殺すぞ!』などと言われ余計パニックになってしまうということもあります。

 一般の家に金庫は必要ないんです。銀行の貸金庫や口座に入れておくなど、家になるべく現金を置かないことがよいでしょう。どうしても明日の朝まで家に現金を置いておかなければならないといったようなときは、台所などにある床下収納に一時的に保管してカーペットを敷いて物を置いておくとよいでしょう。面倒なところに隠しておかなければ、見つかってしまいます」

資産状況を話さない

 さらに一軒家の場合は「シェルター的な部屋」を作っておくことも防犯につながると小川氏は言う。

「何かあったらその部屋に集まると家族で決めておく。大掛かりではありませんが、内鍵を取り付け、危険を察知したら家族で逃げて鍵を閉められるようにしておきます。またその部屋には窓があって、脱出できなければなりません。ですが外から侵入されてしまったら意味がありませんので、なるべく高さのある窓が望ましいです。高ければ逃げにくいですので、部屋に三脚梯子などを準備しておき、それで降りて逃げられるようにしておくと良いかと思います。

 また鍵は1つでなく、補助錠をつけておき、入り口ドアは丈夫にしておきます。施錠のためのデットボルトという部品には、従来よりも長いものがあり、これはドアを揺らしても開けられません。また本来室内のドアではない、玄関ドアに使うような丈夫なものを室内に使い、ドアスコープもつけて外の様子が見えるようにしておきます。この部屋は泥棒と鉢合わせした際にも有効です。そして部屋を用意するだけでなく練習しておいたほうがいいでしょう。実際に窓から出てみます。学校などでも定期的に避難訓練をしているように、家で練習しておくことが重要です。また強盗が深夜に侵入することも多いので暗い時でも出られるようにしておくことが必要です」

 毎日のように強盗が発生している昨今において、もうひとつ簡単にできる対策は「資産状況を話さない」ことだという。

「話すと巡り巡って情報屋に辿り着きます。知り合いから伝わるパターンもありますし、外で話をしている場合それを聞いている人から伝わっていく場合もあります。話すにしても『金はない』とかそういう話にしてください」

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。