金のためなら老婆を殺す「ルフィ強盗団」から家族をどう守るか…伝説の元“泥棒刑事”が明かす「闇バイト凶悪集団」が“最も恐れるもの”とは
SNS上の「闇バイト」募集に名乗りを上げた若者たちが強盗に手を染める“広域強盗”が相次いでいる。10月30日にも東京・三鷹市で強盗未遂事件が発生。都内の交番に出頭し逮捕された実行犯の大学生(23)は「金に困ってXで“ホワイト案件”を見つけた」と供述している。この大学生のように、実行役はXやインスタ、TikTokなどのSNSで集められたのち、秘匿性の高いアプリに移行。指示役とメッセージのやり取りや通話をしながら実行に及ぶ。秘匿性の高いアプリといえば「テレグラム」か「シグナル」が有名だが、昨今では「シグナル」が主流のようだ。
【写真】「泥棒刑事」が明かす“今すぐに出来る”強盗団対策とは
逮捕された実行役らのなかには「“ホワイト案件”に応募したところ、強盗を指示された」という者もいれば、「指示役らに身分証と顔写真を送ってしまっていることから、家族へ危害が及ぶことを恐れて加担した」という者もいる。実行に至る経緯はさまざまだが、実行役らはおおむね即席で集められた素人集団であることが特徴であり、指示役にとっては、いくらでも替えの聞く“使い捨て”である。
高額報酬につられて集められた素人の実行役らは、指示役から強盗を命じられている場合が多い。広域強盗において指示役は、確実に大金を得るために家人が在宅しているタイミングで盗みを敢行することを望むからだ。命じられた実行役らは念入りに下見を行い、在宅を確認したうえで、家人へ脅迫、暴行を加え強盗を実行する。複数回の下見の際に不在の場合のみ空き巣に切り替えられる。つまり強盗の装備で空き巣をするため、家人の帰宅などにより、いつでもまた強盗に切り替えることができる。
本来、空き巣は人目につくことを嫌う。広域強盗との違いはどこにあるのか。そして広域強盗において家人が取れる対策はあるのか。『泥棒刑事』(宝島新書)などの著書があり、現役時代は多くの“職業泥棒”と戦ってきた、元神奈川県警捜査三課部長刑事、小川泰平氏に聞いてみた。
【高橋ユキ/ノンフィクションライター】
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犯罪者の3原則
小川氏によれば「泥棒はじめ犯罪者には3つの原則がある」と言う。
「まず1つめは『気づかれない』、次が『見つからない』、そして最後に『捕まらない』。例外として詐欺師は、気づかれてはいないが顔は知られている、という場合もありますが、大体はこの3原則を守って行動します。ですので対策としては、気づいて見つけて捕まえれば良いのですが、昨今の広域強盗では指示役がおり、実行役がその指示を受けて強盗を行う。1、2はすっ飛ばして、最後の『捕まらなければいい』という考えだけなのです」(小川氏。以下同)
もちろん、実行役は逮捕されている。『捕まらなければいい』と考えているのは指示役であり、彼らは実行役に「捕まらない」方法を教示することはしない。
「そのため実行役は、指紋やゲソ痕(足跡)などあらゆる証拠を現場に置いていきます。だから捕まるのも早いんです。しかも実行役は積極的に加担しているわけではなく半ば脅されて犯行に及ぶものもおり、1人捕まると、他の共犯が自ら出頭することもあります。こうして実行役だけが捕まっていきます。捕まっても次から次に使い捨てのバイトが投入されていきます。ここまで世の中で騒がれていれば、闇バイトで強盗をする可能性があることは応募するほうも分かっているんです。でも金欲しさに応募してしまう」
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