受刑者を「さん付け」で“刑務所”は本当に処遇改善できるのか 刑務官がストレスを募らせる理由「1年も経たずに辞めていく新米刑務官も結構います」
法改正の実感に乏しい受刑者
刑事収容施設法は受刑者の処遇を改善することを目的にしている。ところが、その恩恵にあずかれる受刑者はいないようなのだ。
「処遇を改善しようとしているのかもしれませんが、そのための制度を利用できないんですから、正しく機能するはずがないですよね。とにかく刑務所は所長次第です。法改正で処遇の改善が行われたのかもしれませんが、ほとんどの所長は監獄法時代のやり方や考えが抜けきれていませんし、その姿勢で部下を教育していますから、根本的にはあまり変わってないんじゃないですかね」(Aさん)
Aさんは「刑務官は受刑者をいたぶることにある種の快感を覚えているんでしょう」と言う。その原因は刑務官側に根深くある特権意識だけでなく「刑務官同士のパワハラの捌け口ではないか?」と全員が口を揃えた。Aさん、Bさん、Cさんの指摘をまとめると、以下のようなものになる。
「とにかく刑務官同士のパワハラが異常なんですよ。ひらたく言えば先輩が後輩を“シメる”んです。刑務所で刑務官は班ごとに勤務していますが、班内で細かな連絡がない新米刑務官がいたりすると、先輩がその後輩を取調室に連れ込んでシメるのが当たり前なんですよ。取調室ってそういうことをするためにある部屋じゃないと思うんですけど」
刑務官のストレス
さらに後輩を「カメラ室」に配置することで“シメる”方法もあるという。
「刑務所内のカメラの画面を見ながら監視する部屋なんですけど、ひとりで毎日何時間もその部屋で勤務させるんです。塀の中にある小部屋に閉じこめるわけですから、カメラ室に入れられた刑務官のほとんどがうつ病みたいになります。それで1年も経たずに辞めていく新米刑務官も結構いますね」(Aさん・Bさん・Cさんの話を総合)
刑務官同士のイジメも日常的だ。そのストレスを発散するため、刑務官は受刑者に八つ当たり的ないたぶり行為に及ぶ。元刑務官も「確かにありますね」と、刑務官のうっぷん晴らしを認める。
「刑務所での勤務はかなりストレスが溜まります。罪を犯した受刑者が刑務所にいるのは当たり前ですが、刑務官は罪を犯したわけではないのに刑務所の中にいますからね。受刑者はいつか出所できますが、刑務官はずっと刑務所で働きます。刑期を終えて刑務所を去る元受刑囚のことをうらやましく思う刑務官もいます。自分で選んだ仕事だとはいえ、塀の中と外はあまりに違う。刑務所にいるだけでストレスを感じるわけです。その結果、刑務官同士のコミュニケーションがおかしくなることもあると思います。守秘義務違反になるとマズいのであまり詳しい話は言えませんけど、彼ら(元受刑者たち)が話す内容はほぼ合ってますね」
刑務所の改革は失敗
受刑者のことを「Aさん」と呼ぶようになっても、名前を呼ぶ側の刑務官が膨大はストレスを抱え込み、その捌け口として受刑者に日常的なパワハラを行っているようでは、処遇改善など成功するはずがない。
刑務所における環境改善の第一歩は刑務官の意識改革だと言われている。最初の段階から大きく失敗しているとの感想を持たざるを得ない。
第2回【受刑者の「不服申し立て」には高い壁…刑務官が“昇進”と“保身”ばかりに精を出す「塀の中」の知られざる現実】では、全く機能していない申立制度、査定が全てという刑務官の実態、刑務所の中で受刑者の人権が完全に無視されている現状をお伝えする──。
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