「100歳以上生きる人」の共通点とは? 500人以上の百寿者と面談した専門家が明かす 「老害という言葉を危惧している」

ドクター新潮 ライフ

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誠実な人は長生き

 人間の性格を「開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症的傾向(情緒安定性)」の五つの側面、「ビッグ5」から捉える方法があるのですが、誠実性の高さと長寿は関連するとの報告がいくつもなされています。

 誠実性が高い、つまりは自己修練を続けられる性格の持ち主であることが長寿の要素の一つといえるわけです。私がお会いしてきた超高齢者、百寿者に「やるべきことがある人」が多かったのは、誠実性の高さゆえに、ルーティンワークをこなすことができていると考えられるのではないでしょうか。

 さらに、長生きするためにもうひとつ知っておいていただきたいのが、「ステレオタイプ身体化理論」です。日本人を対象に、19年間、同じ人を追跡調査した研究では、若い時に加齢にポジティブな態度を取っていた人は、ネガティブだった人たちと比較して4年長生きしたと報告されています。同種の研究結果は他にもあり、「年を取るのはイヤなものだ」というステレオタイプな考えは、いつしか自らに絡みついて身体化し、実際に長生きするのを阻害してしまうのです。

「老害」の負のループ

 では、「個々人のネガティブな加齢観」は何によってもたらされるのか。それは、“ピンピンコロリ以外は不幸である”という「社会全体のネガティブな加齢観」ではないでしょうか。ですから、「老害」という言葉が跋扈(ばっこ)しているいまの世の中の状況は、結局はそのステレオタイプな考え方が個々人に跳ね返ってきて、各人を不幸な高齢者にしてしまう「負のループ」に陥らせる恐れがあるのではないかと危惧しています。

 百寿者は英語で「センテナリアン」。文字通り、センチュリー(1世紀)を生き抜いた人です。ピンピンコロリ型であろうと、フニャフニャスルリ型であろうと、私はそこにロマンを感じるのですが、果たしてみなさんはどうでしょうか。

権藤恭之(ごんどうやすゆき)
1965年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科教授。老年心理学。2000年より慶應義塾大学と共同で百寿者、超百寿者(110歳以上の人)の訪問面接調査を実施。10年からは、同大医学部と東京都健康長寿医療センター研究所と共同で、高齢者の縦断調査SONICを行っている。今年8月『100歳は世界をどう見ているのか データで読み解く「老年的超越」の謎』を出版。

週刊新潮 2024年11月7日号掲載

特別読物「500人以上の百寿者と面談 老年心理学の専門家が見た『超長生きする人』の共通点」より

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