米国では「アマゴルフ中継」拡大中なのに「日本の大学ゴルフ」はなぜ中継されないのか 連盟の重鎮たちが唱える驚きの「平等」論とは
選手のモチベーションを向上させる効果
スタンフォード大学女子ゴルフ部のコーチ、アン・ウォーカー氏は言う。
「大学ゴルフ部がテレビ中継される以前は、観戦に来てくれた人々は大学別、チーム別に応援していた。でも、テレビ中継が始まってからは、選手1人1人の名前やバックグラウンド、さまざまなエピソードなども紹介されるようになったおかげで、ギャラリーはチームだけではなく選手個人個人を応援してくれるようになった」
同大学ゴルフ部で大活躍し、鳴り物入りでプロ転向したローズ・チャンは、まさに大学ゴルフのテレビ中継によってナショナル・デビューを果たした。そしてその勢いのまま、米LPGAにデビューした。
「カレッジゴルファーのうちから名前が覚えられ、応援されることは、本人のやる気を喚起させ、モチベーションを向上させる」と、ウォーカー氏。その通り、チャンは大学ゴルフのテレビ中継の恩恵を最大限に受けた選手と言えるだろう。
連盟の重鎮たちが唱える「平等」
一方、日本の大学ゴルフといえば、かつては日本大学、日本体育大学、専修大学などが強豪校と言われ、近年では東北福祉大学が数多くのプロを輩出している。
そんな中、今年の全国大学ゴルフ対抗戦を制し、「大学ゴルフ、日本一」に輝いたのは早稲田大学で、これは日本の大学ゴルフの歴史を塗り替える快挙だった。
早稲田には前述のトップアマ、中野がいる。だが、中野を含め、チームの勝利に貢献した4名の必死の戦いぶりとチーム全員の献身的なサポートがもしもテレビ中継されていたら、史上初の早稲田の優勝はさらに大きな影響を日本のゴルフ界にもたらすことができたのではないだろうか。
大学駅伝、大学野球、大学ラグビーなどが、テレビ中継される一方で、日本の大学ゴルフのテレビ中継は、生中継はもちろんのこと、録画放送も無い。ネット中継すら皆無だ。
それは一体なぜなのか。日本の大学ゴルフを統括しているのは日本学生連盟や関東学生連盟といった組織だが、ある関係者によると、連盟の理事の中に、いわゆる強豪校がいないため、強豪校を盛り立てることに積極的にならない傾向が見られるとのこと。
そして、連盟の重鎮たちがお題目のように唱えているのは「大学ゴルフはプロの養成機関ではない」「どの大学も平等だ」というフレーズだそうで、それゆえ強豪校や強豪選手が注目を集めることになるテレビ中継が日本では行われていないのだと考えると、「なるほど」と頷ける。
野球に「甲子園中継」があるならゴルフにも
しかし、その発想を少しばかり転換させてみては、いかがだろうか。
米国の大学ゴルフのテレビ中継が米国ゴルフの興隆の大きなきっかけとなったことに倣い、日本でも大学ゴルフの面白さや魅力をもっと積極的に伝えたら、カレッジゴルファーのエネルギーやパワーが、日本のゴルフ全体を押し上げる力になってくれるに違いない。
日本の野球の世界では、甲子園の熱戦がテレビ中継され、そこから未来のスターが輩出されている。米国のゴルフの世界では、大学ゴルフのテレビ中継が、さまざまな方面を刺激している。
日本のゴルフ界においても、大学ゴルフのテレビ中継、いっそのこと高校ゴルフのテレビ中継を検討してみる価値は十分にあるのではないだろうか。
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